食事だけでは不足しがちな栄養素をピンポイントかつ手軽に摂れるはずのサプリメント。しかし、決して万能ではなく、専門家たちから厳しい指摘が寄せられるものもある。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんが説明する。
「サプリメントは薬と違って厳格な検査は不要になっています。成分量の表記に関しても“計算上、これくらいの量になる”という目安であり、実際に入っているのは記載されている量よりも少ないことが多いのです」
国民生活センターが実際に市販されているサプリを選んでテストしたところ、100商品中42商品は、定められた時間内に水に溶けなかった。つまり、のんでも吸収されずに排出されている可能性すらあるのだ。管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「たとえ吸収されていても、グルコサミンやコンドロイチンが変形性関節症の痛みや機能を改善することはほぼないことがさまざまな研究によって明らかになっています。また、ザクロを主成分にしたサプリや健康食品はいっとき、女性ホルモンのエストロゲンに類似した物質が豊富だと話題になりましたが、国民生活センターの調査によって否定されています」(望月さん)
ビタミンCや魚の油も、サプリで摂るメリットがないと望月さんは続ける。
「免疫力アップにいいといわれるビタミンCですが、マラソンランナーのように激しい身体運動を短期間行った人が風邪の発生率を低下させるのに役立つ可能性があるとされているだけです。健康な人が日々の生活でビタミンCを摂っても風邪予防の効果は期待できない。EPAやDHAも食事で摂れば心疾患予防になることがわかっていますが、サプリでの効果は証明されていません」
ほかにも骨を作るビタミンDや肌にいいといわれるコラーゲンも効果のほどは疑わしい。
のんでも意味がないならまだしも、死亡率が上がるサプリもある。東京大学非常勤講師の左巻健男さんが解説する。
「肺がんの罹患リスクの高い人を対象に、β-カロテンを中心にビタミンEなどの抗酸化作用のあるサプリを与える群とプラセボ(ニセ薬)を与える群に分けて大規模臨床試験をしたところ、β-カロテンサプリをのんだ人はのまない人に比べて肺がんにかかるリスクが高く、全死亡率も高いことがわかりました。栄養素を食事ではなくサプリとして摂る行為そのものが、死亡リスクを高めるのではないかと考えられます」
サプリメントと同様、「飲むだけで体の調子を整える」と話題を集めてきた酵素ドリンクにも専門家たちは懐疑的な目線を送る。
「酵素の原料はほぼたんぱく質。飲んだ後、すぐに胃腸の中で分解されて消化・吸収されます。口から摂取した酵素が残って、体の中で充分に作用することは難しいでしょう」(望月さん)
つまり、サプリや酵素として加工された形で摂取するよりもフレッシュな食品をそのまま摂ることがいちばんの健康食なのだ。
※女性セブン2023年8月17・24日号