食事や食べ方は、いつの時代も健康法のムーブメントの中心にある。しかしその中には日進月歩の医学や科学によって否定されたものもあり、効果がないどころか体を蝕んでいるケースすら存在する。調査や研究によってその「結論」は刻一刻と変わっている。
例えば、子供の頃から刷り込みのように繰り返し聞かされてきた「よく噛んで食べましょう」というスローガン。これは一歩間違えれば、体を蝕むことが明らかになっている。二子玉川ガーデン矯正歯科院長の石野善男さんが言う。
「『よく噛む』というと、力を入れることだと思う人もいますが、強く噛みすぎると歯が欠ける恐れもあります。そのため適切な力加減で前歯で食べ物を噛み切って、奥歯ですりつぶして飲み込むのが正しい食べ方。食事中はテレビを見たりせずに食べることに集中し、口を閉じて30回くらい噛んで食べましょう。硬いものを食べると脳への刺激になるし、口腔内の環境改善にもつながりますが、硬すぎるものを無理に食べる必要はありません」
「食べ方の順番」も健康に直結する大事な要素だが、その筆頭であるベジファーストも専門家たちの最新常識に照らし合わせると、必ずしも健康的ではないようだ。
「野菜など繊維質の食べ物は歯の汚れを取る補助をしてくれるため、歯にとっては食事の後半で食べることもプラスになります」(石野さん)
特に70才を超えたら、栄養の観点からも、ベジファーストを改めた方がよい。熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センター長の吉村芳弘さんが指摘する。
「年をとると筋肉を作る力が衰え、次第に消化吸収能力や食べる量も減り、気づかないうちに低栄養になる人が増えてきます。野菜はボリュームがあるので、最初にとると量を食べられなくなってしまう。野菜の前に肉などの栄養があるものをしっかり食べ、たんぱく質と脂質を摂ってください。
体に悪いとされてきた揚げ物やおまんじゅうも、気にせず食べた方がいい。揚げ物は脂質とたんぱく質、おまんじゅうは大豆のたんぱく質と炭水化物が同時に摂れるすぐれた食品です」
アルコールやコンビニ弁当なども、70才を過ぎたらことさらに避ける必要はない。いかに食欲を落とさないかが長寿のカギになるのだ。お腹一杯食べた後、眠くなったらそのままベッドに入ってもいい。
「食後すぐに寝ると脂質を取り込みやすいので、若い人は脂質異常症のリスクを高めます。しかし高齢者は気にしなくて大丈夫。むしろ、食べて疲れたらちょっと休んで、活動できるようにするといいでしょう」(吉村さん)
健康情報は日々アップされ、年齢によっても変化する。正しいと思い込んでいるその食事が、実は健康を蝕んでいるかもしれない。日々更新される情報を知って、リスクを遠ざけよう。
※女性セブン2023年8月17・24日号