8月16日からドラマ『科捜研の女』(テレビ朝日系)のseason23がスタートする。主人公となる京都府警科学捜査研究所の法医研究員・榊マリコを演じるのはもちろん女優・沢口靖子(58)だ。このご長寿ドラマを巡っては、シリーズの“打ち切り”が報じられたことが何度もあるが、それでも20年以上の長きにわたって放送が続いているのには、相応の理由がありそうだ。
『科捜研の女』シリーズは1999年10月に木曜20時枠でスタート。昨年10月から始まったseason22では火曜21時枠に移り、最新シリーズとなるseason23は水曜21時枠となる。スポーツ紙デスクが言う。
「season22までで通常シリーズ269話とスペシャル12話が放送されてきました。200話までの平均視聴率は12.3%という数字で、スペシャルでは15%超えも記録した。高視聴率をキープしてきた名物シリーズであり、言わずと知れた沢口さんの代表作です。
ただ、撮影が京都で行なわれているため、大物俳優に出演してもらう際に制作費が掛かりすぎるとか、視聴率が下落傾向にあるといったことを背景に、2年ほど前から放送が最終回を迎えるたびに“これで打ち切り”という見立ての報道が出ていました。しかし、今回もそうした報道を覆して新シーズンの放送が始まることになった」
たしかに2ケタが当たり前だった視聴率が、前シーズンは10%を割り込むことが目立っていたが、「そもそも放送枠の移動があっても視聴率がガクンと落ちずにいることが異例であり、局側も評価が高いのでは」と評するのは、朝日放送元プロデューサーで帝京大学文学部社会学科講師(テレビジャーナリズム論)の木下浩一氏だ。
「長く続くドラマ作品は、いい意味での“マンネリ”の展開が視聴者に受け入れられることが条件になります。沢口さん演じるマリコが科学的アプローチから事件解決の糸口を見つけていくという『科捜研の女』のパターンは、サプライズ展開がないので若い世代には訴求しにくいが、こういう作品は60代以上の視聴者を安定して掴めれば強い。
基本的に上の年代の視聴者ほど“この時間帯にテレビを見る”という視聴習慣で番組を見ていることが多いが、放送枠が移っても数字が底割れしない『科捜研の女』は、この作品を見たいという高齢層の固定ファンを掴んでいるという証拠でしょう。
かつての『水戸黄門』が郷土色豊かな各地を漫遊して視聴者を楽しませたのと同様に、『科捜研の女』は進化する様々な科学捜査について学びを得られる点を楽しんでいる視聴者が一定数いるということではないか」
こうした特徴は、放送局サイドにとって重宝されるものだ。木下氏が続ける。
「60代以上の固定ファンがいることは、放送局にとっては見逃せないメリットです。番組スポンサーを探すうえでも、最近は若い世代の個人視聴率を重視する企業もありますが、オーソドックスな大企業スポンサーは今でも高齢層を含む世帯視聴率を重視する。局としては2ケタの世帯視聴率が期待できるシリーズを打ち切るのは相当に勇気のいること。
もちろん、1985年のNHK朝ドラ『澪つくし』でヒロインを演じて全国区になって以降、沢口さんが清純なイメージと美しさを保っているからこそ、視聴者が安心できるいい意味でのマンネリが受け入れられているという面もあるでしょう。
また、京都で撮影しているということで、放送局としてはドラマを続けることで京都の撮影所とのつながりをキープできるのも大きい。古都・京都というロケーションでの強みは様々な場面で重要になる上に、現地の撮影スタッフとのつながりも不可欠ですからね」
※週刊ポスト2023年8月18・25日号