レディース専門誌『ティーンズロード』を通して、レディース少女と雑誌編集者の30年前の青春の日々を描いた『特攻服少女と1825日』。同書は第29回小学館ノンフィクション大賞受賞作。コラムニストの辛酸なめ子さんは、この1冊について何を感じたのか。
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特攻服少女たちとほぼ同世代の私は、スマホのないあの頃の人間関係がいかに濃いものだったかが強く思い起こされました。当時の通信手段はポケベルか家電の二択。『特攻服少女と1825日』の中には愛知県が誇る日本一のレディース『スケ連』初代会長ののぶこさんが、大勢いるメンバーのポケベルの番号をそらんじて著者が驚かされるというシーンが出てきますが、私も当時、6人くらい友達の家電の番号を覚えていました。いまでは考えられません。
記憶力と同様、『貴族院女族』『烈慰羅』『華愚夜姫』など、かっこいい当て字を使ったチーム名も、スマホがなかった時代の賜物ではないでしょうか。スマホの自動変換や予測変換は確かに便利ですが、こういう漢字のセンスは磨かれない気がします。
また、『ティーンズロード』の投稿ページに夢中になる読者の白熱ぶりから、当時は「どんな雑誌を読んでいるか」によって自分のキャラが決まる時代だったことを懐かしく思い出しました。東京で中高一貫の女子校に通っていた私は『オリーブ』派。『ティーンズロード』を持ち歩いていたら、クラスメートや先生にさぞかしびっくりされたと思います(笑い)。