レディース専門誌『ティーンズロード』を通して、レディース少女と雑誌編集者の30年前の青春の日々を描いた『特攻服少女と1825日』。同書は第29回小学館ノンフィクション大賞受賞作。バッドボーイズ・佐田正樹は同書を読み、何を感じたのか。
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『ティーンズロード』、懐かしいですね。高校時代、九州で暴走族の総長をやっていた頃、『チャンプロード』『ヤングオート』と合わせて、“三大不良雑誌”でした。かわいい子が載ってないかなって、よくチェックしてましたね(笑い)。
印象的だったのは表紙を何度も飾っていた人気レディース『紫優嬢』総長の中村すえこさん。前髪が工藤静香みたいで、紫の特攻服にサラシを巻いて、赤い口紅で……インパクトがありましたね。だけどそれ以上に驚いたのは、彼女がその後、少年院出院者の社会復帰を支える活動を始めたこと。実はぼくも少年院の慰問をしているから、その関係で一緒に仕事をしたことがあります。本書に出てくる元レディースの橘ジュンさんも孤立した少女を支援するNPOの代表ですよね。
やっぱり悪さをするには理由があるんですよ。家庭の事情とかでみんなが当たり前に知っているような常識を知らなかったり、善悪の基準を教えてくれる大人が周囲にいなかったりする。そんな若者の選択肢を広げてあげたいというのが、慰問を始めたきっかけになっています。
不良って、よくはないんでしょうけど、ある種の筋は通ってるんです。仲間を裏切るようなことはしないし、縦社会なので礼儀にもうるさい。理不尽なこともたくさんあったし、けんかや抗争で痛い思いもたくさんしたけれど、だからこそ忍耐力が身についたし、“引き際”も知ることができた。
子供の教育でもよく言われますが、火の熱さは実際に触ってみないとわからない。それと同じで、リアルな経験がない故に痛みを理解できずに相手を追い込んでしまう人が増えているように思います。そうした危うさにみんな薄々気がついているから、この本が広く読まれているんじゃないかな。
だから、褒められたことじゃないだろうけれど、暴走族だったことを後悔してないんです。土埃のにおいと爆音に包まれると、自分たちだけの世界に入れた。そこがとても居心地がよかったことを、本書を読んで改めて思い出しました。誰が何と言おうと、最高の居場所でした。
【プロフィール】
佐田正樹(さた・まさき)さん/1978年福岡県生まれ。お笑いコンビ「バッドボーイズ」のツッコミ担当。吉本興業所属。高校時代は地元で暴走族の総長。自伝的小説『デメキン』は映画化もされ、ベストセラーに。
『特攻服少女と1825日』(小学館)
居場所を求めてさまよっていたレディース総長たちと「活字のマブダチ」との青春の日々と、彼女たちのいまをつづったノンフィクション。
※女性セブン2023年8月31日号