中国内陸部の陝西省西安市で発見された前漢(紀元前206年~紀元後8年)の皇帝、文帝(紀元前202年~同157年)の王墓からジャイアントパンダをはじめ、虎や獏(バク)、インド水牛、ウシ科のオリックス、カモシカ、ヤクの遺骨など、珍しい動物の遺骨が出土していたことが明らかになった。2000年以上前のパンダの骨が見つかるのは初めて。中国紙「環球時報」が報じた。
漢代の中国では死者は多くの物と共に埋葬された。地下の陵墓には、皇帝が生前に使用していた宝飾品、食料品、鉄器、陶器、青銅印章、玩具、乗り物、武器、侍女(漢の時代までは人身御供ではなく像の形)などが埋められた。
これは皇帝が死後の世界でも、生きていた時とまったく同じような生活を送るとの信仰のあったことを反映している、と考えられている。
文帝は生前、珍しい動物を集めて、自分だけの動物園を造って楽しんでおり、死後も動物と一緒に暮らせるように、「地下動物園」としてパンダなどの動物を埋葬したとみられる。
とくに、ジャイアントパンダは竹林に覆われた中国中央部を東西に貫く標高2000~3000mの秦嶺山脈に生息するため、見つけるのは困難だったことから、文帝にも珍重されたようだ。
王墓のなかのパンダが埋葬された穴からは、男性の陶器の置物と穀物の入った壺が発見されたが、動物の飼育係とその飼料を表していると考えられている。
中国では前2世紀ごろに表されたとされる最古の字書「爾雅(じが)」に「食鉄獣」などとしてパンダが載っており、文帝の時代にもパンダは知られていたとみられるが、実際にその時代のパンダの骨が発見されるのは今回が初めてだ。
パンダの存在を初めて知った外国人は博物学に詳しいフランス人宣教師のアルマン・ダヴィドで、1869年3月11日、四川省西部宝興県で地元の猟師が持っていた白黒模様の毛皮が「熊猫」のものといわれたことで、それ以後、パンダが世界に知られるきっかけとなった。