中国政府はこのほど、福建省など3カ所での原子力発電所の新規建設プロジェクトを承認したと発表した。しかし、中国では過去に広東省や福建省の原子力発電所で放射能漏れなどの事故が起きており、建設予定地の住民や福建省の対岸の台湾から、安全性を疑問視する声が高まっている。米報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」が報じた。
中国の李強首相は7月末、中国国務院(政府)常務委員会を主宰し、福建省寧徳、山東省石島湾、遼寧省徐達堡での原子力発電プロジェクトを承認することを決定した。これらの原子力発電所は、既存の(稼働中および建設中の)原子力発電所に新たなユニットを追加するもの。
このなかでも、台湾に最も近い寧徳の発電所ではすでに4ユニットが稼働しており、プロジェクトの第2段階で建設される2ユニットは、中国独自の第3世代原子力技術である「華龍1号」を導入する予定だ。しかし、中国政府は華龍1号の設計図や安全性などの詳細については国家機密として発表しておらず、安全性への懸念が消えていない。
中国では2021年6月、香港に近い中国広東省の台山原子力発電所の建設や運転で、協力関係にあるフランス企業が米政府に対して、「原発周辺地域での放射線量の増加しており、放射能漏れ事故が起きたもようだと伝えた」とCNNが報じている。これに対して、中国政府は事故発生約1カ月後に台山原子力発電所で燃料棒の一部が破損し、冷却材の放射線の濃度が上昇したと発表し、事故を認めている。
しかし、中国の原発の安全管理を担当する国家核安全局は台山原発1号機の原子炉に備わっている6万本余りの燃料棒のうち、推計で5本前後で軽微な破損がおきたにすぎないとして「よくある現象」だとして、問題視していない姿勢を示した。
中国政府は福島第一原発で計画されている年間22兆ベクレルの処理水の放出を批判しているが、今回新たに2ユニットの建設が承認された寧徳原発から出されるトリチウムは約102兆ベクレル(2021年)となっている。中国の原発の安全性について、寧徳原発から台湾海峡を挟んで200キロ離れた台湾では当局が大きな懸念を示している。