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【キャンセルカルチャー】ネットで執拗に絡んでくる匿名の「極端な人」は誰なのか 説得不可能、ブロックするしかない

(写真/PIXTA)

他人を“抹殺”するほどの「大衆の狂気」はなぜ生じるのか(写真/PIXTA)

《パリの街の美しいこと!》。視察旅行先のフランス・パリからなんとものんきな投稿をしたのは、自民党女性局長の松川るい参議院議員。7月下旬に行われた自民党女性局のフランス研修中、松川議員はエッフェル塔の前でポーズを取った写真をSNSに投稿するなど大ハシャギ。物価高や猛暑に苦しむ国民から「税金で優雅にパリ旅行か」「浮かれすぎ」との批判が殺到し、大炎上したにもかかわらず「中身のある真面目な研修なのに、誤解を招いてしまい申し訳ない」「費用は党費と各参加者の自腹」などと“弁明”し、火に油を注ぐ事態となった。

 これについて『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』などの著作がある、作家の橘玲さんが指摘する。

「この問題の本質は、“なぜ研修が必要なのか”という政治家としての説明責任を果たさず、場当たり的な言い訳に終始していること。誤解だというだけでは、さらに炎上して叩かれるのも当然でしょう。いまの時代、高い社会的地位にある人は、自らの言動を説明できないと、『キャンセル』、すなわち、社会的に“抹殺”されてしまう可能性があります」

 新著『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)で橘さんは、現代社会を覆う「キャンセルカルチャー」の正体を分析した。

「キャンセルカルチャーとは、不適切な言動をした人物や組織をSNSなどで一斉に非難し、その存在を社会的に抹消(キャンセル)する『社会正義』の運動を言います。日本では2021年の東京五輪の際、ミュージシャンの小山田圭吾氏が学生時代のいじめ行為や過去に雑誌のインタビューで障害者に対して不適切な発言をしていたことを理由に炎上し、開会式の楽曲担当を辞任したことで注目されました」

 キャンセルの対象になるのは主に著名人だが、一般人とて、安心はできない。

みんなが誰かを“抹殺”できる

 長野県在住のOさん(45才)が肩を落として打ち明ける。

「娘の小学校のPTA役員選びが難航していたから、軽い気持ちでSNSに“役員なんてヒマな専業主婦がやればいいのに”と書き込んだんです。するとあっという間に拡散されて、“主婦をバカにするな”“共働きがそんなに偉いのか”といったコメントが殺到し、怖くなってアカウントを削除しました。おかげでその投稿を見ていたママ友からも腫れもの扱いされるようになり、気づいたらすっかり孤立していました」

 こうしたキャンセルカルチャーの根源は人間の本能にあると、橘さんは指摘する。

「徹底的に社会的動物である人間は、進化の過程で、“社会は公正であるべきだ”という規範を脳にインプットされました。実際、近年の脳科学では、不道徳な者を罰すると脳の報酬系が刺激されてドーパミンが分泌され、大きな快感を得ることがわかっています。

 SNS時代のいまは、誰もが『正義』を振りかざして、気に入らない相手を即座に“一斉攻撃”できる。すべての人が“道徳警察”となり、いつ誰がキャンセルの標的になってもおかしくない時代になったのです」(橘さん・以下同)

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