2021年度に約11万9000件となり、10年間で1.5倍に増加した墓じまいの件数(厚生労働省「衛生行政報告例」より)。先祖代々の墓の改葬を終えたら、次は自分自身の「墓」を考える番だ。無事に墓じまいが済んだら田舎の土地に縛られることはなくなるので、普段は口にしづらい自分と妻の墓をどうするかについても話し合いたい。
ゼロベースで検討を始める場合は、「将来、離婚する可能性があること」「妻から一緒の墓に入りたくないと言われる可能性があること」なども考慮に入れて話し合いを進めるといいという。葬送コンサルタントの吉川美津子氏が言う。
「夫婦で入るつもりの墓を購入してから離婚した場合は面倒になります。現金や不動産は財産分与の対象になりますが、永代使用料を払って使用権を得ているだけの墓は分けようがありません。そのため、取り壊して更地にするか、夫婦どちらかが引き継いで『自分の墓』にするしかありません」(以下、吉川氏)
妻と墓を持たない可能性や、子供に迷惑をかけたくないといったことを考慮するなら、自分の墓を持たない集合墓という選択肢もある。
「納骨堂以外で最近、特に人気を集めているのが樹木葬です」
樹木葬は霊園や寺などの敷地に遺骨を埋葬し、墓石の代わりに樹木を墓標とする形式で、供養や終活についての情報提供を行なう鎌倉新書の調べでは、2022年に新規に墓を購入した人の51.8%が樹木葬を選んでいるという。
千葉県在住のAさん(70代男性)は「自分の時には子供に迷惑がかからない樹木葬にしたい」という。集合墓のため承継者が不要で、後継問題に悩むことはなく、妻と離れても揉めることはない。
先祖代々受け継がれてきた家や土地を守る風習が各地でなくなりつつあるなか、墓の選択肢も多様化している。今後の自分や家族に相応しい墓の形とは何か──盆明けの今こそ、じっくり考えたい。
※週刊ポスト2023年9月1日号