医療の発達によってがん治療の選択肢は切るだけではなくなった。だが、外科手術を勧める医師は多く、場合によっては“手術で死ぬ”可能性もある。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が語る。
「手術によって死に至ることを『手術関連死』と言います。がんが進行して周囲の臓器に浸潤している場合などは手術が難しく一定の割合で発生します。特に重要な臓器である『肝胆膵(肝臓、胆嚢、膵臓)』はメスを入れるのが困難なうえ、周囲に大きな血管が走っているため、未熟な外科医が執刀すれば血管を傷つけやすく失血死などのリスクが高い」(以下「 」内同)
手術中に医療事故が発生すると延命治療を施されることになるが、それがさらなる悲劇を生む。
「ICUに運ばれて体中に管を通して輸血などを行ない、数日間生存したうえで死に至る。本人に意識がなければ苦しむことはないでしょうが、意識が戻って1か月間以上苦しんだあげく亡くなるというケースもあります」
がんを切ることでQOL(生活の質)が下がり、残りの人生に支障をきたす場合もある。
「前立腺がんはステージ3までは切っても切らなくても5年生存率が変わらないにもかかわらず、医師の勧めで手術してED(勃起障害)や尿漏れでおむつに頼らなくてはならなくなる恐れがある」
また抗がん剤治療などの選択肢もある。
「肺がんに対しては抗がん剤の開発が進みました。ただし、治療薬による肺障害や肝障害などの副作用のリスクがあるため、注意が必要です」
がんは部位によって効果のある治療法が異なることを理解する必要がある。そのうえで、上医師は「がんの進行度合いや自身の健康度合いによって正しい治療法を選択する姿勢が大切だ」と言う。
「早期のがんは内視鏡や腹腔鏡手術で完治できる可能性が高いので手術が有効です。ただし、75歳以上で体力に不安があれば慎重な判断が求められます」
まずは信頼できる医師を見つけることだ。
※週刊ポスト2023年9月1日号