長年、医師に処方されてきた薬は死ぬまで飲み続けるべきか、それとも減らすべきか。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が薬を飲み続けるリスクを語る。
「高血圧や糖尿病と診断されて生活習慣病関連の薬でも、長期間の服用中に、副作用が出る恐れがあります。しばしば見られるケースが、低血圧や低血糖になり、ふらつきが生じての転倒です。骨折して寝たきりになったり打ち所が悪く命に危険が生じる場合もある。また、血液をサラサラにする抗血栓薬を服用していると、脳出血を起こした時に出血が止まりにくく、命の危険が生じます」(以下「 」内同)
厄介なのは、一度に何種類もの薬を飲む「多剤併用」の問題だ。
「体の不調に合わせて様々な薬が処方されるようになります。1回5種類以上飲む場合は副作用が出やすいという報告もあり、薬の代謝にかかわる肝臓や腎臓に負担が生じて肝機能障害、腎機能障害を起こすこともあります」
飲み合わせによって薬効を打ち消すという負の連鎖にも陥りかねない。とはいえ、自己判断での断薬は避けたい。
「抗血栓薬を患者の判断で勝手にやめると血液が固まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすケースもあります」
無理な断薬ではなく、薬の「優先順位」を意識することが重要だ。
「持病の治療や進行を抑えるための薬は服用しないと健康を損ねます。ただし、血圧や血糖値などの数値を抑える生活習慣病の薬は、食事や運動に気を遣って生活習慣を改善することで減らせる場合もあります」
薬に頼りすぎず、根本から健康を意識することが健康寿命を延ばす。
※週刊ポスト2023年9月1日号