「ショウヘイは今季残り試合は登板しない」──会見でそう語ったロサンゼルス・エンゼルスのミナシアンGM。目を真っ赤にして、言葉を詰まらせながら質疑に応じる彼が、沈痛な表情で「タフな日だ……」と漏らす場面もあった。
8月23日(日本時間24日)、2週間ぶりに投手として先発した大谷翔平(29才)は2回途中で緊急降板。試合後すぐにMRI検査を行った結果、右肘の靭帯に損傷が見つかったことが明かされた。
今季の大谷はアメリカで逸材を表す“ユニコーン”という呼称が多用されるほど、八面六臂の活躍を見せており、MVP獲得は間違いなしと目されていた。しかし、このけがで今シーズンの「二刀流」は突然の幕引きとなった。米国在住のスポーツジャーナリストが語る。
「チーム関係者や大谷ファンだけでなく、まさに全米が大きなショックを受けました。ただ、いちばん堪えているのは大谷選手本人でしょう。わずかに可能性の残されたプレーオフ進出に向けてチームがギリギリの戦いを続けるなか、“投手・大谷”が戦線離脱してしまうことは大きな痛手で、責任を感じていると思う。
けがの判明以降、打者としての試合出場は続けていますが、メディアの前に姿を現していないことが本人のショックの大きさを何より物語っています」
いまやアメリカでも球界の至宝と認識されている大谷。肘の靭帯損傷は選手生命にかかわる大けがだけに、ファンからは“エンゼルスが大谷を酷使したからだ”とチーム首脳陣に対する批判も噴出した。
「いうまでもなく、二刀流は通常の選手に比べて体への負担ははるかに大きい。メジャーでは普通の選手でも適度に試合を欠場して休養するのが一般的ですが、今シーズンの約130戦で大谷選手が欠場したのはわずか2試合だけ。出場試合数はチームトップです」(スポーツ紙記者)
実際、現地メディアの中には、「エンゼルスが大谷に全幅の信頼を寄せすぎたこと、そして大谷の気質をチーム側が理解できていなかったことがこういう残念な故障につながったんじゃないかという気がしている」と話す記者も現れた。
そんな世間からの批判を受けてか、球団は26日に「8月3日の時点で大谷に精密検査を提案したが、本人と代理人が断った」と発表。大谷自身が検査を拒否し、試合出場を強行していた事実を公表したのだ。
大谷を襲ったけがの予兆を、“同業者”たちは感じとっていたという。サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手(37才)は8月25日、自身の音声配信アプリで大谷の話題について言及。大谷が“爪割れ”によりマウンドを降りた6月頃から、ダルビッシュは大谷の投球動作に違和感を覚え「球速も落ちているし、爪だけの問題ではない」「肘なんじゃないかな」と思っていたと明かした。
同日の試合で打者・大谷と対戦したニューヨーク・メッツの千賀滉大投手(30才)も、試合後のメディア対応で次のように語っている。
「やっぱり投げ方もそうですし、出力もそうですし、パフォーマンス力も本来の彼とは少し遠い部分があった。ぼくだけでなく、大谷選手を好きな人はみんな思っていたんじゃないか」