2023年は生成AIの年と言っていいだろう。その代表的な存在として知られるようになったChatGPTは、文章を入力するだけで文章作成やプログラミング、翻訳等様々なことができるAIチャットサービスであり、様々な分野での活用が期待されている。既に大学生もAIを利用し始めており、就活に活用する「AI就活」も行われている。AI就活のリスクと問題点、コツについて、若者のICT利用実態に詳しい成蹊大学客員教授高橋暁子さんに聞いた。
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大学生にとって、AIはどのくらい身近なものなのだろうか。講師を務める大学の初回講義内で聞いたところ、164名のうち約3割は「知らなかった」、「知っていたが使っていない」が約半数。「知っていたし使っていた」は約1割止まりだった。
4月時点での大学生の認知度は高くなく、「この講義で初めて聞いた」という学生が何人もいたほどだ。知っている学生も、「何となく危なそう」「犯罪への悪用が怖い」「レポートが書けると聞いた」「便利そうだから使ってみたい」くらいの認識が多かった。
ところが、積極的にChatGPT等の生成AIに関する最新ニュースを紹介するようにしたところ、学生たちの反応は変わり始めた。情報リテラシー関連のテーマを一つ選んで講義内で発表してもらうのだが、生成AIを選ぶ学生が増えてきたのだ。
デジタル広告最大手サイバーエージェントの事例は、特に学生の関心が高かった。同社は、広告効果の予測を行う広告制作支援AIシステムである極予測AIを開発、導入。その結果、広告クリエイティブの出来栄えを判断するディレクター職はかつての30~40人からゼロになっている。一方、優れたコピーの作成率は10%から24%へ伸びた。ディレクター職だった人材は営業職などの他の職種に転向したり、同社を退社したという。
2024年卒業予定の大学生・大学院生を対象としたマイナビの「マイナビ 2024年卒大学生活動実態調査 (5月)」(2023年5月)でも、同様の結果が現れている。先進的なAI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観や志望業種・志望職種・志望企業などに影響を受けたことはあるかを聞いたところ、影響を受けたことが「ある」と回答した学生が15.3%いた。
就活に、「IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション。データとデジタル技術を活用し企業を変革、生活を改善すること)に対応した企業」「AIに奪われない仕事」という視点が新たに加わったというわけだ。