エンゼルス・大谷翔平(29)が「右肘靭帯の損傷」により今季中に投手として登板しないことがわかってから約2週間。周囲の心配をよそに大谷は野手として活躍を続け、「三冠王」も射程圏内だ。
大谷は2018年にも右肘靭帯を損傷し、オフには肘を再建するトミー・ジョン手術を受けている。今回のケガはどのような状態で、今後どのような治療を選択することが考えられるのか。
日本スポーツ協会公認スポーツドクターで、古川整形外科医院院長の古川泰三氏が解説する。
「今回の損傷は前回のケガとは別箇所と報じられていますが、完全断裂となれば2度目のトミー・ジョン手術をするしかない。1度目の手術跡があるので難度は上がります。リハビリ期間も長くなりますし、厳しいトレーニングを積むことになる」
2度以上肘にメスを入れ、投げ続けた投手は多くない。いよいよ、大谷も投手は断念して打者専念か……そんな不安の声も球界関係者の間では囁かれている。が、ヤクルト時代に3度のトミー・ジョン手術を受けた館山昌平氏(42)は、自身の経験を踏まえこう話す。
「損傷の程度がまだわかりませんが、打撃はできていますし、場合によっては手術せずに様子を見ることで回復する可能性もあります。
私はピッチャーしかできず、キャリアを続けるためには手術をするという選択肢しかなかった。全治1年の手術をするのは怖さもありますし、当然痛みもあります。でも大谷選手は、ケガで二刀流を諦めるというタイプではないと思う。2度目の手術になるとしても、投手を続ける手段を考えているはずです」
投手として阪神に入団し、移籍したロッテでは野手に転向。その後さらに阪神に戻って投手に再転向し「松井秀喜キラー」として活躍した遠山奬志(昭治)氏(56)もこう言う。
「私は二刀流ではありませんが、左投げ左打ちで再度投手に転向する時、1年かけて野手の身体から投手の身体に変えました。そりゃ大変ですよ。大谷は右投げ左打ちの二刀流をすることでバランスよく投打の筋肉が鍛えられている。
大谷は投打の二刀流でリフレッシュでき、いい成績を残している部分があると思います。さらなる進化した二刀流でしか大谷の復活はないのではないか」
※週刊ポスト2023年9月15・22日号