ジャニーズ事務所・ジャニー喜多川前社長の性加害問題をめぐって8月29日、「外部専門家による再発防止特別チーム」(座長・林真琴前検事総長)が作成した調査報告書が公表された。報告書では、再発防止策の1つとして「被害者の救済措置制度」をあげ、「ジャニーズ事務所は、直ちに、ジャニー氏の性加害の被害者に対し、被害回復のための適切な補償をする被害者救済措置制度を構築して、性加害の被害を受けた被害者との対話をすみやかに開始する必要がある」と記した。
ジャニーズ事務所はこの調査報告書を受けて9月7日に記者会見を開く予定だが、具体的な救済措置や賠償問題はどうなっていくのか。性犯罪被害者の支援に取り組んでいる上谷さくら弁護士の見解を聞いた。第一の焦点は、賠償をめぐって裁判になるか否かだ。
「刑事事件にならない場合、性被害をめぐる賠償は、基本的には民事裁判で決めるか、裁判所が関わらない当事者同士の示談で決めるかになります。ただし、民事裁判の場合は、原告の訴えにあった加害者の行為を一つ一つ精査・認定していくことになるので、立証が大変で被害者が精神的にとても辛いのと、判決では請求額よりも金額がかなり抑えられてしまいます。
さらに今回のケースでは、加害者であるジャニー喜多川氏がもう亡くなっています。また時効の問題もあります。時効については解釈が様々なので、民事で訴えてもいいのですが、賠償を認めるハードルがさらに高くなるのは確かです。その点を踏まえても、民事裁判は考えにくいでしょう。
今回、特別チームの調査で性被害があったことが認定されましたから、報告書の提言に従い、ジャニーズ事務所が救済案を策定し、被害者に合意を求めることになると思います。被害者側としても、裁判より早期に高めの賠償額が期待できるのではないでしょうか。なお、救済措置についての法律はありません。特別チームは、この種の補償に関して知見と経験を有する外部専門家(民法学者等)から意見を聴取した上で『判断基準』を策定しておくべきと提言しています。それを元に、ジャニーズ事務所が 被害者に対して、独自に金額を提示することになるのではないでしょうか 」