中国人民解放軍が軍用機による台湾の防衛識別圏侵入を繰り返し、台湾軍機がスクランブル(緊急発進)をかける回数も年々増加している。そのため、来年の台湾軍の燃料費予算は前年比56%増の110億台湾元(約500億円)にも達する見通しであることが明らかになった。
台湾では来年1月に総統選挙を控えており、選挙の動向次第では中国が攻勢を強めてくる可能性があるとして、来年の国防予算は大幅に増加することが確実だという。台湾紙「中国時報」が報じた。
台湾周辺では中国軍機などによる威嚇行為や軍事演習が活発化し、台湾の軍機のスクランブルや海軍による警戒警備の回数が激増して、これに伴い防衛のためのコストが膨らんでいる。
台湾の国防省の発表によると、中国軍機が2021年の1年間で台湾の防空識別圏に進入した回数は850回以上だったが、すでに今年上半期だけで900回近くに及び、2021年の侵入回数を超えている。
このため、台湾の空軍と海軍が偵察や哨戒、その他の任務のために使う燃料費として、今年は71億台湾元(約320億円)を計上しているが、不足することが考えられることから、2024年度にはおよそ110億台湾元(約500億円)と大幅に膨れあがる見込みだという。
中国の場合、無人機の1時間当たりの燃料コストは約5000人民元(約10万円)とされるが、台湾軍機の最低コストは日本円で同16万円、台湾空軍が採用しているフランス製のミラージュ戦闘機の場合は同80万円と、中国に比べて燃料コストが割高となっている。
台湾の行政院は8月25日、2024年の防衛費を過去最高となる総額6068億台湾ドル(約2兆7700億円)とする予算案を閣議決定した。これは2023年に比べると4.6%増となる。防衛費の増加は7年連続で、予算案は立法院(国会)での審議を経て、年内に正式決定する見通しだ。