SNSにおけるファンと選手の距離感を考えさせられる出来事だった。9月3日、ヤクルト対阪神戦(神宮球場)の9回、ヤクルトの山本大貴が阪神の近本光司に右脇腹に死球をぶつけ、近本は途中交代。試合終了後、ヤクルトの高津臣吾監督は謝罪もなく、すぐにベンチから引き上げた。これについて、阪神の岡田彰布監督は「呆れるよな。おらんかったんよ、高津。ベンチに。情けない。2年連続優勝したチームやしのう。そういうチームなんやろ」と怒り心頭の様子だった。
ヤクルト投手陣は今年、両リーグ1位の58死球を与えている(9月5日現在)。8月13日には今野龍太が阪神の梅野隆太郎の左手首にぶつけ、戦線離脱させている。19日には木沢尚文が中日の石川昂弥の頭に当てて、危険球退場になった。
「梅野は今季絶望と言われています。近本も5日の試合を欠場した。優勝争いの最中に、しかも7点差ついた9回に当てられた。内角攻めは投手の生命線ですが、二度も主力がぶつけられれば岡田監督が激昂するのも当然です。しかも、近本は7月2日の巨人戦で高梨雄平から死球を受け、右肋骨骨折で離脱している。違うチームとはいえ、要の選手が二度もぶつけられれば、怒りは止まない。それはファンも同じ気持ちでしょう。ただ一部のファンがSNSで過剰に反応している点は気になります」(野球担当記者。以下同)
スタジアムDJへの謝罪要求
山本は近本に死球を与えたが、後続の打者を抑えてベンチに下がり、スタジアムDJのパトリック・ユウ氏がいつものように「ナイスピッチング!」と叫んだ。これに対して、SNSを中心に一部の阪神ファンが「死球をぶつけておいてナイスピッチングとは何事だ」と声を上げた。
「デッドボールを受けた直後に言ったら大問題ですが、その回を無失点に抑えたことについて『ナイスピッチング!』と称えたということでしょう。主力選手のケガが心配なのはわかりますが、文脈を読まずに激怒し、謝罪を要求するというのは、行き過ぎではないか。確かにヤクルトのデッドボールは悪手であり、首脳陣やピッチャーが責められるのはわかります。しかし、その気持ちを球場DJにぶつけるのはお門違いでしょう。一番噛みつきやすい人に噛みついたという印象です」