9月10日に初日を迎える大相撲9月場所。2場所連続で新大関が誕生し、1横綱3大関の番付となる。関脇の若元春、大栄翔による大関獲りは振り出しに戻ったが、先場所11勝の琴ノ若が新関脇に昇進して“次の大関争い”に加わることになった。新大関の豊昇龍が2006年の白鵬(現・宮城野親方)以来となる新大関優勝を果たすのか、昇進2場所目でカド番となった霧島、7度目のカド番の貴景勝が奮起するのか、といった大関の相撲に注目が集まるが、新番付で“白鵬の弟子たち”の躍進が目立った点も見逃せない。
先場所、新入幕ながら千秋楽まで優勝争いに加わって西前頭9枚目まで番付を上げた伯桜鵬は8月末に左肩の手術を受けて9月場所は全休となるが、西前頭11枚目には先場所の土俵で大関経験者の朝乃山を右四つがっぷりから寄り切った北青鵬もいる。
この2人は相撲強豪校で白鵬が太いパイプを持つ鳥取城北高校出身だが、十両にも同校出身の宮城野部屋の注目株がいる。新十両になったのは向中野から改名した天照鵬。伯桜鵬の1年先輩で、北青鵬の1年後輩。少年相撲大会「白鵬杯」での優勝経験もある。名前の由来となった天照大神が祀られる伊勢神宮の所在する地元・伊勢市から鳥取へと中学で相撲留学した“白鵬チルドレン”だ。
また、十両下位には先場所から関取となっている輝鵬がいる。十両昇進で川副から改名した宮城野部屋のホープ。日大出身で幕下15枚目格付け出しデビューした元学生横綱だ。輝鵬も白鵬杯での優勝経験がある。167cmの小兵ながら身体能力が高い。若手親方が言う。
「5月場所初日の伊勢ヶ濱一門の一門会で来年2月の理事選に出馬表明をした白鵬ですが、同一門からは浅香山親方(元大関・魁皇)が推挙され、協会も役員待遇に引き上げた。年功序列で白鵬にはまだ早いという判断を一門はしているが、本人は強行突破の出馬で当選する自信があるようだ。かつて、貴乃花が同様に一門の枠を飛び出して理事となったが、それは当時の北の湖理事長の後ろ盾があってのこと。白鵬は執行部に敵だらけで、“貴の乱、第二幕”のような状況で思惑通りに事が運ぶとは限らない。
そうした白鵬を援護射撃するとばかりに、弟子たちが土俵で頑張っているわけです。伯桜鵬はデビュー1場所で十両に昇進し、新入幕場所では千秋楽まで優勝争いに絡み、あわや新入幕Vだった。大物食いの北青鵬も踏ん張っている。さらに十両でも白鵬チルドレンが大暴れの予感がある。当然ながら弟子たちが実績を残せば親方としての白鵬の存在感は高まり、理事に推す声も出てくる可能性がある。一門で来年の理事選候補を絞るのは11月場所中の時期とされ、9月場所での成績が影響してくる部分はあるでしょう」