夫や妻に秘密で見知らぬ異性と会うための機会と場所を提供する“既婚者合コン”が、話題になっているという。既婚男女が参加する合コンと聞くと、瞬間的に“不倫相手を探す飲み会”を想像し、“汚らわしい”と思う人もいるかもしれない。しかし、「実は不倫まで考えずに参加している人が多い」と話すのは、男女関係に詳しいノンフィクションライターの亀山早苗さんだ。
「特に専業主婦の場合、そもそも男性と話す機会が少ないので、まずは話し相手が欲しい。コロナ禍で外出の機会が減り、“話し相手は宅配のお兄さんだけ”という人も少なくありませんから。そんな人たちにとっては、同年代の異性と話ができる、夫に代わってちやほやしてくれるというだけでも楽しい。もちろん、その後男女関係に発展する可能性もありますが、きっかけは、それくらい気軽なようです」(亀山さん・以下同)
出会いといえばSNSやマッチングアプリもあるが、会うまでのハードルは高い。合コンなら、主催者が参加者の身元を保証したうえで会えるので、相手の見極めもしやすく、手っ取り早い。
「離婚はしないけど恋愛気分を味わいたい既婚者にとって、職場や同窓会と違ってしがらみがない合コンは、うってつけの場所のようです」
既婚者が“友達”を作る場として誕生
お笑い芸人・ジャングルポケットの斉藤慎二しかり、女優の広末涼子しかり、不倫をすれば世間から批判を浴びる。“不倫は悪”という風潮は根強い。そんな中でなぜ、既婚者合コンは誕生したのか。既婚者合コンを主催する運営会社『キコンパ』の代表・田中大輔さんは、合コンはあくまで出会いの場であり、不倫の場ではない。不倫の温床という考えを変えたいという。
「そもそも、16年前に始めたときは、“40代からの友達作り”が目的の異業種交流会でした。その理念は変わっていません」(田中さん・以下同)
前代表が55才で会社を早期退職したとき、仕事仲間以外の“友達”がいないことに気づき、自分が楽しむために立ち上げたのだという。
個人的な催しとして始めたのだが、申込者が殺到。その結果、運営会社を立ち上げるまでになったという。
「不倫はよくないことですが、異性と食事に行くだけで“既婚者なのに”と不審な目で見られ、友達すら作れないのは息苦しい。その点、合コンの場でなら、多くの人と交流できます。出会いは異性間だけではなく、同性同士にもあり、女性同士仲よくなって旅行に行ったケースもよく聞きます」
既婚者合コンとは本来、既婚者という似た境遇の友達を作る場なのである。
結婚相手以外との出会いが家庭円満の鍵
それにしてもなぜ、既婚者の出会いが求められ続けるのか。
「明治時代に西洋から入ってきた“結婚後は配偶者だけを愛し続けるべき”という考え方が、現実に合わないという人が一定数いるのではないでしょうか」
と、社会学者の松木洋人さんは言う。
「結婚には生活を支え合い、子育てをするためという意味合いが、いまだに強いですよね。ですから、結婚生活を続けていると、配偶者への気持ちが変化することはありうる。それでも、生活は維持しなければならないとなると、妻や夫以外の相手との出会いを求める人もいるのかなと思います」(松木さん)
正解はない。だが、結婚相手では満たされない癒しを外に求めることで、家庭を円満に保つ人は増えているようだ。
【取材協力】
キコンパ/2007年設立。既婚者イベントや飲み会の運営を行う。既婚者合コンは100%自社主催を特徴とする。全国22エリアで365日既婚者合コンを開催している(予約はこちらから。https://www.kikonpa.jp/)
【プロフィール】
社会学者・松木洋人さん/早稲田大学人間科学学術院教授。専門は家族社会学。論文に「自分の婚外性愛についての相談/回答はどのように成し遂げられるのか:新聞紙上の人生相談記事を題材とした探索的考察」などがある。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2023年9月21日号