ライフ

オーストラリア政府が非外科的治療の規制強化へ、美容医療のインフルエンサーやSNSの取り締まりも

(写真/イメージマート)

オーストラリアで美容医療の規制強化が進む(写真/イメージマート)

 2023年9月5日、オーストラリア政府が美容医療の規制強化に乗り出す方針を明らかにした。非外科的治療を対象として、新たに施術のガイドラインを設けるほか、美容医療の広告の取り締まりを強化する。オーストラリアで、医療関係者の規制に関わっているAHPRA(オーストラリア医療従事者規制庁)とMBA(オーストラリア医療委員会)が中心となる。

美容外科では規制強化、医師の診療中止などの動きも

 オーストラリアでは、2022年までに美容外科の取り締まりを強化する動きが進んでいた。2022年9月以降、16の改革が実施され、ほとんどが完了した。例えば、美容外科ホットラインが開設され、その苦情を受けて、14人の医師は美容外科の診療の中止など、取り締まりが強化された。

 それから1年が経過し、今回、新たに非外科的治療に対する取り締まりが強化されることになった。非外科的治療は、ヒアルロン酸やボツリヌス療法などの注入治療のほか、糸リフト、照射治療などが含まれる。

 世界的な傾向として、美容医療のニーズが拡大しているが、オーストラリアでも美容医療の利用者が増加している。中でも非外科的治療の市場規模が約10億ドル(日本円で約950億円)に達し、美容医療における存在感が高まっている。

 ヒフコNEWSでは美容医療に関連した日本でのトラブルの発生について何度も伝えているが、オーストラリアにおいても同様にトラブルの報告が増えているという。今回の方向では、照射治療に伴うヤケドや、糸リフトに伴う感染症などのケースを紹介している。

 今後、オーストラリアは国が主導する形で、すべての医療関係者を対象とした、非外科的治療の診療ガイドラインの協議を開始する。さらに、新しい広告ガイドラインについては、非外科的治療を広告するすべての医療関係者に適用されると説明している。

施術前の話し合い重視、広告取り締まりへ

「美容医療は髪を切るように気軽に受けるものではない。私たちは、安全な診療がどのようなものであるかを一般の人々に知ってもらい、医療関係者が一般の人々の安全を守るために必要なあらゆることをしていることを確認したい」とAHPRAの代表は述べる。

 今回の発表によると、美容医療を受ける人に対して、施術前のカウンセリングやコンサルテーション、インフォームドコンセントなどと呼ばれる話し合いを重視する内容の指針が示される方向だという。施術を受ける人が、施術内容をよく理解しないまま治療を受けるケースが問題視されていることから、医療関係者と患者とのコミュニケーションの向上が求められている。

 ヒフコNEWSでは、日本の医療広告ガイドラインについて紹介しているが、オーストラリアでも同様に広告ガイドラインが設けられる。体験談の使用禁止のほか、インフルエンサーやソーシャルメディアの利用について明確なルールが設けられる見通しで、日本のガイドラインよりも取り締まりの対象は広くなる可能性がありそうだ。

 2024年前半にガイドラインが公表される予定で、今後、数カ月の間にガイドライン案の公開協議が始まると説明している。美容医療に対する規制強化の動きは、トラブルが相次いで報告されている日本も無縁とは言えない。

参考文献

Cosmetic procedures in the spotlight one year on from surgery review

AHPRA reveals next phase of cosmetic medicine crackdown

美容医療のトラブル急増、過去最多の相談件数に国民生活センターが注意喚起

禁止されている美容医療の広告とは何?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」 Vol.1

こんな医療広告は危ない!?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.2

限定解除要項と注意したい内容は?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.3

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン