実現したからには、アレではなく、はっきり言葉にしていいだろう。阪神タイガースがセ・リーグ優勝を果たした。SNSでは優勝を目前に「あかん、阪神アレしてまう」というフレーズが飛び交い、虎党の期待値が高まっていたが、18年ぶりのリーグ制覇に、その喜びも爆発している。
「アレ(優勝)」を始めとした独特の言葉選びも魅力の岡田彰布監督(65)は、どのようにチームを勝利に導いてきたのか。優勝を記念し、彼のこれまでの歩みと、今シーズンの采配を振り返る──。
目次
・「アレ」「おーん」抱腹絶倒の岡田語録
・16年ぶり9連勝で好スタート
・「守り勝つ野球」がカギ
・ “聖域”を作らない選手起用
・岡田監督は1996年に指導者の道へ
・現在につながる、苦い経験。そして「そらそうよ」へ──
「アレ」「おーん」抱腹絶倒の岡田語録
昨秋就任した岡田監督。「選手がプレッシャーに感じる」という理由で優勝を“アレ”と呼び、ほかにも「おーん」や「ういういうい」、「そらそうよ」など、独特の言葉遣いが話題に。スポーツ紙は、毎日のように「岡田語録」を紙面に掲載。デイリースポーツでは「岡田監督アレトーク」、サンケイスポーツでは「岡田監督のまあ聞いてえな」(関西版)のタイトルで“連載化”されていた。
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16年ぶり9連勝で好スタート
16年ぶりに9連勝し、開幕から好調を維持した。元阪神監督で、岡田監督が1980年に入団した当時の一軍守備・走塁コーチだった安藤統男氏は、「今年は春のキャンプから『こういう野球をやる』という岡田の考えがチームに浸透しています」と指摘。「昨季までの矢野燿大監督と違い、トップが余裕を持って戦っているので、選手が落ち着いている。地に足がついた野球ができています」と高く評価した。
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「守り勝つ野球」がカギ
好調が続く中で、守り面での手腕が冴えわたった。元阪神監督で現役時代に岡田監督と二遊間を守った藤田平氏は、以下のように分析した。
「野球をよく勉強している岡田の神髄は、ピッチャーを含めて守り勝つ野球です。今季の阪神は粘り強い野球が増え、1点差の試合に強い。延長戦でも負けていません。岡田は内野手出身で守備を重視しているから、接戦になるとその良さが発揮されるのでしょう」(藤田氏)
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“聖域”を作らない選手起用
独走が続き、8月3日からは10連勝。同月16日にはマジック29を点灯させた。岡田監督は、“聖域”を作らず、あくまで適材適所で選手を起用した。
「矢野燿大・前監督は潜在能力を見込んで、結果が出なくても佐藤輝明を使い続けました。一方、岡田監督は打てなければ佐藤でも容赦なく二軍落ちさせている。控え選手のモチベーションを考えると、“聖域”を作らない采配はチームを活性化させる。佐藤に厳しく接することが、今のチーム成績につながっている側面はあるでしょう」(プロ野球担当記者)
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岡田監督は1996年に指導者の道へ
そんな岡田監督が指導者としてのキャリアをスタートさせたのは1996年。前年に現役を引退し、オリックスの二軍助監督兼打撃コーチに就任した。彼を指導者の世界に導いたのは、当時のオリックス監督・仰木彬氏だったという。第一次岡田阪神(2004~2008年)で編成部長としてチームを支えた黒田正宏氏がその事情を語る。
「仰木さんは『うちで燃え尽きたらどうや』と岡田を誘って現役最後の2年間をオリックスでプレーさせたのち、『いずれ阪神に戻るやろうが、うちで指導者の勉強をしていけや』と助監督とコーチをやらせたそうです。そこで岡田は選手の見極め方と育成法を勉強したと聞いています」
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現在につながる、苦い経験。そして「そらそうよ」へ──
2004年に阪神の監督に就任。2008年は開幕ダッシュに成功するも、北京五輪を挟んでチームは失速。13ゲームをひっくり返されて2位となり、岡田監督は阪神を去った。それから1年間の評論家生活を経て、2009年オフにオリックス監督として現場に復帰。しかし3年連続Bクラスに終わり、2012年シーズン終了前に球団は岡田氏の休養を発表した。岡田氏にとって2度目の大きな屈辱だった。
だが、「その経験は決して無駄ではなかった」と第一次岡田阪神(2004~2008年)で編成部長としてチームを支えた黒田正宏氏は言う。
「オリックスの3年間はたしかに屈辱的なものだったでしょう。ただし、それが自分の野球を見つめ直す得難い経験となり、現在につながっているはずです」
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