「みんなすぐに叔父さんと比べるけど、正直嬉しくはないよね」。九月場所の土俵に上がる新大関・豊昇龍(24)。場所前、叔父の元横綱・朝青龍が3場所で大関を通過したことを聞くと、こう答えた。
「オレはオレだし、叔父さんはすごい人。比べられる立場にないからね。過去、大関は253人いるけど、さらに上の横綱へ昇進できたのは73人だけ。そんな横綱で叔父さんは25回も優勝している。自分と比べるのはまだまだ早いよ」
叔父さんと似ているところを恐る恐る聞いてみた。
「それをオレに聞く? オレと叔父さんにかぶっている人に聞かないと……。顔が似てるって言われているようだけどね」
叔父さんはマスコミやカメラの前で笑顔を見せてくれなかったと伝えると、「そんなことないよ。メチャ笑う人だけどな。叔父を目指してオレも笑うのやめようかな」と笑顔を見せた。
「型がなくても強いということを証明したいね」
先場所、トリプル大関取りを制した豊昇龍は、押し相撲の大栄翔、左四つからの寄りを武器とする若元春に対して「型がない」と言われていた。
「型がない力士は上に上がれないと言われるが、それでも大関になれた。型がなくても強いということを証明したいね。オレは相手が苦手とする相撲を取っている。嫌がる相撲をするのがオレの型じゃないかな」
自分自身を見失いたくないため理想とする力士はいないと言い放つ豊昇龍。それでも叔父の存在はかなり意識しているようだ。
「叔父さんは新大関で10番勝ったんですよね。それで2場所目で優勝。連覇して3場所で大関から横綱に昇進している。さすがにそれは意識しないよ。ただ、叔父さんからは大関になった直後から“次は横綱だな”とプレッシャーをかけられているけどね(苦笑)」
来日は8年前。日体大柏高校にスポーツ留学生として欧勝馬(日体大を経て鳴戸部屋に入門)と朝白龍(拓殖大を経て高砂部屋に入門)の3人で、同じ飛行機に乗って日本へやってきた。
豊昇龍はモンゴル時代に相撲経験がなく、欧勝馬とともにレスリング部に入部(朝白龍は相撲部)。
だが、2か月後には相撲部に転部(欧勝馬は大学で相撲部に入部)し、3年生でインターハイの個人で準優勝の成績を残すまでに成長。高校卒業時に立浪親方(元小結・旭豊)にスカウトされてプロ入りした。