『極道の妻たち(R)』『少女犯罪』『セックスレスな男たち』などの著書で、男女の性愛や風俗にスポットを当ててきた作家の家田荘子氏が、8月に上梓したのが『大人処女――彼女たちの選択には理由がある』(祥伝社新書)である。僧侶としても活動する家田氏が、「30歳を過ぎて男性経験のない女性の性」というテーマを選んだのはなぜか。家田氏に話を聞いた。
「取材を始めようと思ったのはコロナ前、池袋の個性的なバーでひとりの女性と出会ったことがきっかけです。お客さんが皆知り合いになってしまうようなバーなのですが、とても清楚なアルバイトの女性がいて、目立っていました。店のママから『あの子はまだ男性経験がないのよ』と聞いたんです。
当時彼女は28歳。過去に彼氏がいてもおかしくない、キレイで肉感的な女性なのに――と驚きました。以前に『セックスレスな男たち』という本を出版して、増えていることはわかっていましたが、未経験の男性も増えていて、女性はどうなのかと思いました」(家田氏、以下同)
未経験の30代女性は実際に増えているのか。国立社会保障・人口問題研究所がほぼ5年に一度行なっている「出生動向基本調査」(2021年6月実施)によると、30~34歳において、未婚男性の37.2%、未婚女性の44.4%が性交体験がないと答えている。2015年の調査では、同男性が29.9%、同女性が38.7%だったので、男女ともに未経験の比率が高まっている。絶対数で見ても、30歳を過ぎて性行為の経験がない女性、家田氏が唱える“大人処女”は多いのだ。
「30歳を越えて未経験という女性には、今までほとんどスポットが当たっていなかったので、それを声に出さない女性が多かったのです。取材してみたら、未経験を選択した理由があるとわかり、それを伝えたかった」
『大人処女』には様々な立場の9人の女性が登場し、未経験のまま年齢を重ねてきた理由を語っている。池袋のバーで働いていた前出の女性は、男性に対する興味があまりなく、交際経験もゼロだったが、〈親を安心させたい〉という一心で、32歳のときに19歳年上のイラン人の男性と結婚した。結婚後も夫は妻に一切手を出さず、夫婦生活はまるでシェアハウスでの共同生活のようだが、女性は〈このままがいいと思っている〉という。
一方、男性との交際経験はあり、誘いにも応じたが、挿入時の痛みに耐えきれず、未経験のままという女性も出てくる。メーカー勤務の事務職の女性は処女を捨てたいと思い、何人かの男性と試したが、激痛に耐えかねてうまくいかなかったという。