タイムリーな言葉遣いは、会話術のなかでも重要な要素である。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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球団史上最も早いペースで、阪神タイガースが18年ぶりにアレしました。おめでとうございます。ん? もう決まったからハッキリ言っていいのかな。でも、このあとクライマックスシリーズや日本シリーズがあるから、まだ言わないほうがいいですね。
ぶっちぎりの強さ以上に注目を集めたのが、岡田彰布監督の「語録」です。代表的なのは「アレ」。昨秋の監督就任以来、優〇のことを「アレ」と言っているのは、選手に余計なプレッシャーを与えないため。ファンやスポーツ紙やテレビも面白がって、いや監督の意図を尊重して、優○のことを「アレ」と言い続けています。
「アレ」の歴史は、けっして浅くはありません。岡田監督は、かつて「優〇」という言葉を口にしたことでチームの調子が崩れた苦い経験があり、オリックス・バッファローズの監督だった2010年にも、交流戦で優〇を狙える位置にいるときにその言葉を禁句にしていました。そのおかげか、オリックスはその年の交流戦で見事にアレします。
球団の今季のスローガンも、ズバリ「A.R.E.」。3文字それぞれに意味があり、Aは「Aim(明確な目標)」、Rは「Respect(野球や先輩方への尊敬)」、Eは「Empower(さらにパワーアップ)」を表わしています。当初の案は別の単語でしたが、語学に堪能な妻の陽子さんから助言をもらった岡田監督が、修正案として今の3つを強くプッシュしたとか。
さらに、岡田監督の代名詞にもなっているのが「そらそうよ」です。なんと球団は「そらそうよ」の商標登録を申請し、今年6月に認められました。それを監督に報告したときに「そらそうよ」と言ったかどうかは確認できていません。