「別班」という聞き慣れない単語を見事、世間に膾炙させた前代未聞のアドベンチャードラマ『VIVANT』(TBS系)。その中心には、生活のすべてを演じることに捧げるひとりの役者がいる。主演・堺雅人の半生の物語。【全3回の第1回】
「ここまで見てくださった皆様を、絶対に裏切らない最終回になっています」。有終の美に向けて、TBSの飯田和孝プロデューサーがこんなコメントを発表した日曜劇場『VIVANT』。製作費は1話あたり1億円。2か月半に及ぶモンゴルロケ、事前告知なしの初回放送など、異例だらけのドラマは最高視聴率が40%を超えた『半沢直樹』(2013年、TBS系)のチームが手がける。映像や演出はNetflixなど世界的な動画配信サービスのクオリティーと比べてもまったく遜色ないと評価が高い。
物語は中央アジアの架空の国「バルカ共和国」と日本を舞台に、自衛隊の秘密情報部隊「別班」や公安警察、国際テロ組織「テント」などが暗躍する。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、回を重ねるごとに視聴率を上げ、9月17日の最終回を控え、フィナーレへの期待が最高潮に達している。
豪華キャストの中心にいるのが主演の堺雅人(49才)だ。『半沢直樹』やNHK大河ドラマ『新選組!』(2004年)、『真田丸』(2016年)など数々の名作で存在感を発揮し、いまや国民的俳優となった堺は、『VIVANT』に並々ならぬ決意で臨んだという。
「3年ぶりとなる今回の連ドラ出演に役者人生を懸けて臨んだといわれます。2か月半にも及ぶ海外ロケ中、役柄が抜けるのが嫌だからと、別の仕事の撮影チームをロケ地であるモンゴルに呼び寄せるなど、とにかく『VIVANT』のことを第一に考えていたのです」(テレビ局関係者)
9月10日に放送された緊急特番内でも、共演する役所広司(67才)から「(堺さんは)『噛んじゃいました』とか言うけど、噛んだところがわからない」と演技やせりふ回しを絶賛されていた堺。一切妥協せず徹底的にやり抜く男の「狂気の役者道」のルーツはどこにあるのか。
兵庫県で生まれ、2才から宮崎県で育った堺は、両親と2人の弟という5人家族。高校は県内屈指の進学校である宮崎南高校に進学した。同校のなかでも成績優秀な上位2割が所属する習熟クラスの一員で、当時の目標は国立大学に進んで官僚になること。運動が苦手だったので文化系の部活を希望し、百人一首部とどちらにするか悩んだ末に入部したのが演劇部だった。この頃の堺は、まさか自分が演劇部のリーダーになると想像すらしていなかったという。
「当時の部員は先輩1人だけで部室は敷地の隅っこ。それでも演劇書を紐解いて懸命に稽古に励み、時に『いま表現したい想いを将来的に演じることができても、いまの生々しい想いは消えてしまうのではないか』と哲学的な問いを投げかけ恩師をうならせたそうです」(芸能関係者)