9月13日、初入閣は11人、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を引っさげ、第2次岸田再改造内閣が発足した。だが、岸田文雄・首相の視線はすでに「解散」へと狙いを定めている――。
内閣改造直後から自民党内には「やはり岸田総理は解散・総選挙をやるつもりだ」(ベテラン議員)との受け止めが広がり、再び解散風が強まっている。
「経済対策を最優先にする。必要な予算に裏打ちされた思い切った内容の経済対策を実行したい」
「解散」を決意した首相は、内閣改造に合わせて「総合経済対策」を掲げた。
政府は昨年10月にも約30兆円の補正予算を策定、これまでにガソリン高騰対策だけで約6兆2000億円を計上して石油元売り会社に補助金を出し、電気や都市ガスの料金の高騰対策にも約3兆1000億円を計上、この9月には福島原発の処理水放出に伴う水産業支援のために基金を約1000億円に増額したばかりだ。
それらの予算はまだ使い切っていないが、「物価対策」名目でさらに補正予算を組むというのだ。明らかに選挙向けのバラマキに走ろうとしている。
首相が練っている選挙戦略の“切り札”が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への解散命令請求だという。
旧統一教会問題は首相が文科相に「解散命令」に向けた調査開始を指示してすでに1年近くが経つが、文科省は教団側に質問権を繰り返し行使しただけで進展は見られなかった。すると文科省は9月7日に突然、「質問権の行使に対し教団が適切に回答していない」と教団に行政罰の過料を科すように東京地裁に通知した。内閣改造前に慌ただしく動き出したのだ。
これも解散をにらんだ布石だった。自民党幹部が言う。
「総理は内閣改造で行政経験がなかった麻生派の永岡桂子・文科大臣を交代させ、後任に岸田派で官僚出身の盛山正仁氏を起用した。これは解散命令請求をさせるための人事だ。文科省が裁判所に教団への行政罰を求めたのは、宗教法人法の質問権に基づく調査の手続きを急いで終わらせたということ。総理は10月中旬に盛山文科大臣から教団への正式な解散命令を裁判所に申し立てさせる方針だ」
10月22日総選挙の場合、文科大臣が10月中旬に解散命令請求を行なえばちょうど選挙戦の終盤のタイミングになる。新聞・テレビが、〈政府、旧統一教会の解散命令を請求〉と大きく報じるのは確実で、岸田自民にとってこれ以上ない選挙対策になるという計算が見え見えだ。
裏を返せば、首相が10月下旬から11月の総選挙日程に合わせて請求のタイミングを探っていることが窺える。