中国遼寧省と接する北朝鮮北西部の平安北道では北朝鮮有数の金鉱が存在し、北朝鮮最大と言われる鐘州精錬所では採掘された金の原石を精錬した金塊が、朝鮮労働党の貴重な外貨源となっている。精錬所で働く検査員は、金塊の一部をかすめて、多額の蓄えができることから、「北朝鮮で最も人気のある仕事」と呼ばれている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮では、金や亜鉛、鉄など多くの鉱産資源が豊富なことで知られ、戦前、日本が統治していた時代に造られた精錬所がいまでも使われている。
そのなかでも平安北道の鐘州精錬所では多くの金が精錬されているが、その金の生産を管理・記録し上部に報告する検査員の収入は飛び抜けて高い。ロシアの建設現場に出稼ぎに行く労働者の数倍に達するという。
しかし、高収入に加えて金をかすめ取って蓄財できるため、精錬所の検査員になるのは至難の業だという。まず、精錬のシステムや技能などについて、大学卒業程度の専門知識がなければならない。また、党直属の職場であるため、両親や本人が党員でなければならず、さらに数人の身元保証人が必要だという。
しかし、最も重要なのが所長ら精錬所幹部への賄賂だという。試験を受ける1年以上も前から、コネを使って精錬所に出入りし、所長らと親しくなり、賄賂を渡す。ある人物は、100米ドル相当の衣類と数百米ドル相当の家電製品、あるいは1000ドル以上の現金を賄賂として贈ったという。
これだけの時間とお金を使って検査員になれば、党に納める金を少しずつかすめ取り、それを中国で売りさばき多額の現金を得ることができるのだ。もちろん、横領が発覚すれば極刑になる可能性もあり、大きな賭けであることは間違いない。