「精神的にいちばんしんどかったのは、再発のとき。最初の治療からちょうど5年経った日で、子宮頸がんの場合、治療開始から5年が治癒の目安とされているから『今日で5年だ』というハッピーな気持ちでいたところで告げられて……。体が苦しかったのは再々発。医師から『全身の細胞にがんが回っている可能性がある』と言われ、あんなにがんばってきたけれど、もうだめかもしれない、治療の手立てはあるのだろうかと全身から血の気が引いていくのがわかりました」
女優の古村比呂(57才)は、2012年に子宮頸がんが判明して子宮を全摘出してから3度の再発を繰り返し、現在は4度目の治療をしている。
「再々再発がわかったのが今年の1月。入院はせず、2月から外来で抗がん剤治療を3週間おきに受けて、いま10度目になります。吐き気はないものの、点滴してから1週間くらいは風邪のような症状が出て、その後次第に回復していって歩き回れるようになったらまた抗がん剤が始まる。私のようにがんと“長いつきあい”になるのは、決して少数派ではないんですよ」(古村・以下同)
実際に、例えば大腸がんのステージ3の場合、3割が再発しているというデータもある。医療の発達で、再発しても治療しながら日常生活を送ることは可能になってきているが、やはり再発を繰り返すのは身体にも精神にも大きな負担がかかる。終わりの見えない闘病生活の中で、古村の支えになったのが3人の息子たちだった。
「最初に罹患したとき、私は離婚したばかりのシングルマザー。私は性格的に、がんであることを理由に対応や空気感が変わるのがすごく苦手で。彼らは私のそんな性格をよく知っていたから、風邪をひいたときと同じように対応してくれる。
再々発したときも、『治療すれば大丈夫でしょう?』と言って過度に心配しすぎない。大したことではないと思わせてくれる子供たちのスタンスには、すごく救われていますね。それでいて、私の体調が悪いときはおかゆを作ってくれたり、家事をしてくれたり、こまごまとしたことをサポートしてくれる。ありがたい存在です」
2012年から11年にわたってがんと向き合い続けてきたからこそわかったこともある。
「医学の進歩は常に肌で感じています。実際にいま、4度目の治療で使っている『キイトルーダ』は進行または再発の子宮頸がんに承認されたばかりですし、ステージや病状の分類がかなり細分化されるようになって、治療の選択肢も広がった。
いまだに『抗がん剤は体に悪いから治療しない方がいい』といった間違った情報を信じている人もいるけれど、抗がん剤の治療は病状が進んだ人にとっても有効で、ステージ4で手術ができないという人でも、抗がん剤治療でがんと共存している人は多いです。私も最新医療の力によって、がんが見えなくなる『経過観察』の状態になることがいまの目標です」
【プロフィール】
古村比呂(こむら・ひろ)/1965年北海道生まれ。21才でNHK連続テレビ小説『チョッちゃん』のヒロインを務め、一躍人気女優に。2012年に受けた健診をきっかけに子宮頸がんが判明し、全摘出。2017年3月に再発が、11月に転移が判明。抗がん剤治療の後、2023年1月腹部傍大動脈リンパ節にがんが見つかったことを公表し、現在治療中。
※女性セブン2023年10月5日号