芸能

【「なんだこれは!」と言わせたい】「TAROMAN」仕掛け人が総括する「視聴者を惹きつけるクリエイティブ」【短期連載・てれびのスキマ「『フェイク』のつくりかた」】

真剣な面持ちで撮影に臨むタローマン

真剣な面持ちで撮影に臨むタローマン

 岡本太郎の言葉と作品を伝える特撮番組『TAROMAN岡本太郎式特撮活劇』は、「展覧会 岡本太郎」の関連番組として制作された。岡本太郎の思想のままに行動する巨人「タローマン」は劇中でも“べらぼう”にふるまい、その予測不可能なキャラクターに老若男女から多くの人気を集めた。

 その勢いもあり、放送後には『TAROMAN』続編の制作、関連本の発売、イベントの開催などわずか1年の間に急ピッチでマルチメディアの展開を進み、一連のプロジェクトが今年8月をもって一区切りとなった。

『TAROMAN』を手掛けた映像作家・藤井亮氏は「相当詰め詰めでやった」と振り返り、視聴者を惹きつける映像の制作術まで明かした。

 聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。現在、ネットで話題の「フェイクドキュメンタリー」に意欲的に取り組んできたテレビ番組の制作者にインタビューを行なう短期シリーズの第1回【前後編の前編。文中一部敬称略】。

 * * *

視聴者の“なんだこれは!”を受けて走り抜けた『TAROMAN』の1年間

 2022年7月、NHK Eテレで謎の番組が突如放送された。『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』と題された2週にわたる5分全10話の番組だ。岡本太郎の思想を具現化したでたらめな動きをする巨人「タローマン」が「奇獣」と戦う特撮モノ。タイトルにあるとおり、奇獣たちのモチーフは岡本太郎の作品で、視聴者の予想をすっぱりと裏切る突拍子もない展開に「なんだこれは!」と叫ばずにはいられない。

 しかも、『TAROMAN』は1970年代に放送された作品だという。もちろん、それはフェイク。いわゆるフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)の形式を採った番組で、1970年代に放送されていないのにもかかわらず、わざわざ“1970年代に放送された”という体裁を取っている。

 これに視聴者は騒然となり、大きな反響を巻き起こした。最終回の放送を待たずに、2夜連続でシリーズをまとめて再放送されることが急遽決まるほどだった。番組に関するイベントや展示も各地でおこなわれ、大盛況となった。

 そして今年8月5日には、「でたらめな未発表映像をすべて出し切る」と銘打った続編『帰ってくれタローマン』が放送された。その放送後、監督の藤井亮が、Twitterで「一年間にわたるタローマン活動もこれで一旦完結です」と投稿。一区切りついた心境を藤井はこう語る。

「岡本太郎記念現代芸術振興財団の方に展覧会の開催期間中は基本的に好きにやっていいよと言っていただいて、川崎市岡本太郎美術館の『凱旋!岡本太郎』展に合わせた『超凱旋!タローマン』展の開催で一区切りついたので一旦おしまいということです。『タローマン』は1年っていうタイムリミットがあったので、そこまでにやれることは全部やろうと思って、相当詰め詰めでやったので、走り抜けることができてホッとしています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン