米ワシントンDCの大学の中国人留学生グループが中国の民主化を訴える活動に参加したことを理由に、中国のスパイ活動を摘発する国家安全省が中国内の活動家の家族を連行するなどの脅迫行為を行っていることが明らかになった。国家安全省職員は家族に対して、「あなたの子供は中国の党と国を愛しているのか? もしそうでないなら、もっと党と国を愛するように教えなければならない」などと忠告したという。米国を拠点に活動している中国民主化団体「民主中国陣線(FDC)」の公式ウェブサイトが報じた。
この中国人留学生からなる民主化グループは、ジョージタウン大学法学部の張津睿氏が指導者となっている「ポトマックのかがり火」。同大の学生ら10数人が所属している。
張氏によると、グループは昨年から中国の人権問題の改善、コロナウイルスの感染拡大による厳格な行動制限の撤廃などを要求して、大学内で集会を開き、主張に賛同する署名を集めるなどの活動を行っていた。
活動について、中国当局から直接警告を受けたことはなかったが、今年7月初め、中国東北部遼寧省に住む姉から、「警察から電話で『お子さんはワシントンにいますか?』と聞かれた。『弟さんらは中国の反体制運動のメンバーになっています』と言われた」と告げられた。
その数日後、再び姉からの連絡で「お父さんが警察に連行された。お前が活動を止めないからだと言われた」と知らされたという。
張氏らは今年4月、大学生メンバー10数人を中心に「ポトマックのかがり火」を結成し、活動を開始させたが、親中派の中国人留学生が主なメンバーである「中国人学生学友会(CSSA)」にしばしば活動を妨害された。彼らはワシントンDCの中国大使館に張氏らのグループの活動内容を報告しており、大使館の治安担当要員が北京の国家安全省に連絡し、張氏の家族に危害が及んだとみられるという。
一方で、米国内の警察は大学内の自治などを理由に介入することは難しいとされる。また、大学当局も「中国人学生同士の内輪もめ」として、両者から事情を聞くことくらいしかできないという。