ライフ

SNS時代の美容医療、非現実的な「美しさ」基準との向き合い方、米国形成外科学会が伝える

(写真/イメージマート)

SNS時代の美容医療とは……(写真/イメージマート)

 美容医療を考えるときに、メンタルヘルスを含め、施術を受ける人をトータルに考えることが重要だという。米国形成外科学会(ASPS)が2023年8月29日、ウェブサイトでそんなより良い美容医療を目指す上での課題について伝えている。

見た目だけではなくその人全体を考える

 美容医療において、「美しさ」とは本当に何を意味するのだろうか?ソーシャルメディア(ソーシャルネットワーキングサービス、SNS)が普及して、編集された写真を目にすることが増えて、美に対する考え方は急速に変化している。

 形成外科医のサラ・ディッキー氏とカテリーナ・ガルス氏という2人の医師が、SNSが普及する中で、精神的な幸福感と美容医療がどのように結びついているか、美容医療とどう向き合うかについて考えを述べている。

 2人の話を聞くと、美容整形手術をはじめ美容医療を受けようとときには、医師と人間関係を築いて、何を目指すのか十分にコミュニケーションを取るのが重要だとあらためて認識できる。

 「(医師が)これまでかかった病気、身体の状態、そして重要なこととして、そもそも手術を受ける動機について深く知ること。施術を受ける人の目標を理解すること。そうすることで医師は期待に応えられるような手術を行うことができ、最良の結果を得ることができる」とガルス氏。

デジタルの世界での「期待」の管理

 SNSを見ていると理想的なイメージに惑わされるが、それにあまりに縛られないように注意するのも大切だ。InstagramやTikTokなど、ソーシャルメディアについて「すべてにフィルターがかかっていると思う方がよい」とガルス氏。

 そうした美しいイメージが画面を通じて伝わることで、私たちは非現実的な美の基準を持ちがちになる。ネット上の偽りの情報が増える中で、美容医療の需要も急増しているが、それに伴い、自尊心の低下や身体醜形症に陥る人々も増えている。

 ディッキー氏は、「人は承認欲求のために美容医療を受けるのではなく、あくまで自分のために受けるべき」と言う。非現実的な理想を持つことは、後に失望につながる可能性があるため、事前に期待を現実的なものに保つことが大切になる。

美容医療が失望や苦痛につながらないために

 本人が自分の見た目を悪いと感じていたとしても、客観的に見て明確な問題がなければ手術は正しい選択ではないかもしれない。「自分の容姿のせいで人生がうまくいかないと考えている場合、それにはもっと原因があるはずで、手術によってその気持ちを治せない」とディッキー氏。離婚や子どもの引っ越しなどのために美容整形手術を受けたいと考えるケースもあるが、ふさわしくないと指摘。そうした転機での美容医療は満足感を損なうからだ。

 第一に、生まれつきの美しさについて理解すること。そこからスタートするのが重要になるという。「生涯にわたって自分を大切にすることが、美しさを守る」とディッキー氏。

 美容整形と並行して、何を目指すか、精神的な健康は保たれるかにも気を付ける。医療関係者とオープンにコミュニケーションを取りつつ、トータルな美しさを追求するのが重要という指摘だ。

参考文献

Mindful beauty: Nurturing mental health while pursuing cosmetic surgery

「見た目の大切さ」とは?──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語るVol.1

美容医療と美しさ──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語る Vol.2

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト