放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、神田伯山のラジオ番組について綴る。
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人柄だけは名人級、三遊亭好楽。2階が住まいで1階に自前の寄席。上野「池之端しのぶ亭」(40名で満杯)。私がゲストで出ると言ったら即完売、問い合せのTEL200本。一之輔、竹丸も駆けつけ、私と好楽の“おっさん面白トーク”。私はこの男の家に大学生時代何回も酔って泊まったことがある。最初の師匠・林家正蔵(のちの彦六)のこと、2番目の師匠『笑点』司会だった三遊亭圓楽のことなど話して大盛りあがり。
終わって打ち上げに行こうと表へ出るとなんと寄席は40人だったのに私の出待ちが60人。サインして写真。するとむこうから私よりは全然若いおばちゃますっとんで来て「高田さん、私、週刊ポストの連載何年もずっと読んでるのよ。あれだけは辞めないで。人選が毎週いい!!」。さすが下町のお母さん目ききである。それにしても女の人から週刊ポスト連載の話が出たのは長い人生で初めて。女性だって読んでいる、大切にしなきゃ。
飛ぶ鳥にまで毒を吐いて落としている神田伯山が講談師初の『オールナイトニッポン』2時間の生放送をやることに(9月13日)。私も心配になったので(放禁やら何を言い出すか分からないので)自分の放送で「伯山とっちらかるととんでもないこと言うから当日、深夜オレ立ち会おうかな」とシャレでポツリ言ったら、それがプレッシャーになったらしくスタッフにきいたらオタオタ。放送でも文句言ってた。
「オールナイトニッポン史上、初の父兄参観放送になると思ったら高田センセーいねぇじゃねぇか。そりゃそうだ老人だものな」だと。余計なことをぬかす。途中息切れすると「なんだよ。大のおとながなんで夜中にこんなに必死になって喋ってんだよ。それもこれもたけし&高田が生で2時間という悪しき習慣を作ったんでしょ。1時から3時はワルにとって聖なる時間とした元凶があのふたりなんだよ」。
当たるを幸いなぎ倒しどうにかこうにか史上初の講釈師による『オールナイトニッポン』は無事終了。やかましかったから次はパントマイマーにでも頼んでみるか。
立川談春と柳家三三が「怪談・牡丹灯籠」をひっさげ、長いあの噺をリレーで演じ、全国ツアー中。17日、有楽町朝日ホールでの会を聞きに行ったがまあ達者。「俺たちの圓朝を聴け!」と銘打っているが、落語界の永久欠番だし、宝なんだから流派関係なく「圓朝」をどっちかが継いじゃえばいいのに。それが駄目なら「大圓朝」とでも名乗ったら。
※週刊ポスト2023年10月6・13日号