長年連れ添う夫婦の円満の秘訣は何なのか? 女優の音無美紀子(73)は俳優の村井國夫(79)と1975年に結婚。音無が、幾多の困難を乗り越えてきた結婚生活について振り返る。
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大げんかにこそならないけれど、あぁ嫌な夫だわ、と思うことはそりゃあ幾度もあります。だけど私は役者としての村井さんが好きだから、舞台に立つ姿を見ると、やっぱりいい男だった!と腹が立ったことすべてを忘れてしまう。18才で初めて出会ったときからいままで、ファンのように憧れて尊敬しているんです。
出会いは、当時アングラ演劇として人気を集めていた「自由劇場」の舞台と客席。友達に誘われて見に行ったら、幼なじみだった地井武男さんと一緒に彼が出ていて。そのお芝居があまりに素敵で、衝撃を受けて一目ぼれしてしまいました。
だけどその後はお目にかかる機会がなくて、再会したのは1971年に私が22才でドラマ『お登勢』(TBS系)のヒロインに選ばれたときです。共演者に地井さんと一緒に村井さんの名前があった。共演できるとわかったときは本当にうれしかったです。
いざ現場が始まると、話したいことがたくさんあって、「あのお芝居を見ていました」「こんなテレビ、ご覧になりましたか?」なんて積極的に話しかけて。彼は周囲に「おれは音無にナンパされた」って言っていたらしいです(笑い)。
共演してわかったのは彼が役者の仕事に一途で、努力を重ねる人だということ。よく勉強するし、いつも冷静かつロジカルに分析して演技に挑む。感覚的に演技する私にはないものばかりを持っているんです。
だけど世間からすると、“いい夫”に見えないみたい(苦笑)。確かに、コロナ禍のステイホームを経たいまでこそ、ご飯の炊き方と好物のバスクチーズケーキの作り方をマスターしたけれど、それまで一切料理はしなかったし、私が掃除機をかけていてもソファに座ったまま足をあげるだけ。不倫報道で何度か世間をお騒がせしたこともあって、周囲からは「よくがまんできますね」と言われます。地井さんからも生前、「いつ別れてもいいんだぞ」と声をかけてもらっていました。