10月4日朝から秋田県美郷町の作業小屋に立てこもっていたクマ3頭が翌5日に駆除された。クマたちは親グマ1頭、子グマ2頭とみられる。侵入からオリでの捕獲まで丸1日近くかかり、長時間の騒動は県外からも大きな注目を集めた。
一件落着……かと思いきや、現地では、また別の問題が起きている。クマを駆除したことへの苦情が県外から殺到しているのだ。秋田県美郷町役場の担当者に話を聞いた。
「4日から『クマを駆除しないで』という声が寄せられていましたが、駆除してからは『なぜ殺した』というお叱りが寄せられるようになりました。電話で450件、メールで160件、合わせて600件を超える苦情が2日間で届いています。ひっきりなしに電話がかかってくるため、担当者たちは通常業務ができない状況です。
そういったご意見に対して、私どもでは『人里に一度下りてきたクマは山に戻しても人里にまだ戻ってくる可能性が高い。しかも今回クマが発見されたのは、認定こども園も近くにある住宅街だったため、住民の安全を守るためにやむを得ない対応だった』といった事情をご説明しています」(秋田県美郷町役場の担当者、以下同)
なかには、罵倒してくるような電話もあるという。
「電話を取った瞬間に怒鳴られたり、『人でなし』や『地獄に堕ちろ!』などといった言葉をぶつけてくる方もいます。少しでもご理解いただけないかと、こちらの事情を説明しますが、一方的にまくし立てられては傾聴に徹するしかありません。そのため1件の電話対応が30分以上に及ぶ場合もあります」
苦情に際し、担当者たちで「いろいろな意見があるが、自分の心も大事にして対応しよう」と決めた。大変な状況が続いているが、少し風向きが変わってきたという。
「5日までは批判一辺倒でしたが、“美郷町に苦情が殺到している”というのがニュースになったことで、同じ獣害に悩む地域の方などから『気持ちはわかります』といった励ましの声が届くようになり、勇気づけられています」
一難去って、また一難。町に本当の平穏が戻ってくるまでは、まだ少し時間がかかるのかもしれない──。