NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』が10月2日にスタートした。ヒロインのモデルとなったスター歌手は、「ブギ」というアメリカ音楽を日本流に昇華させ、終戦直後のこの国を明るくした。そんな彼女の人生につきまとう、もう一人の大スターとの確執という暗い影──。【前後編の前編。後編を読む】
『ブギウギ』の第1回放送(10月2日)は、ヒロインの歌手「福来スズ子」を演じる女優・趣里(33)の圧巻の歌とダンスのシーンから始まった。
「趣里さんにはもともと、両親の水谷豊さんと伊藤蘭さん譲りの歌手としての抜群のセンスがありますが、ドラマのために10か月も歌唱の特訓を積んだそうです。脚を高く上げるダンスも練習を重ね、“本家に恥ずかしくないものにしなくては”と強く意識しているようです」(芸能ライター)
ヒロインのモデルは戦後の大スターで“ブギの女王”と称された笠置シヅ子。戦後日本を『東京ブギウギ』をはじめとした名曲の数々で元気づけた笠置の生涯を描くことで、「『今を生きる人たちに、今、必要な活力』というものが描けるかもしれない」(製作発表時の脚本家・足立紳氏のコメント)と考えたという。
ただし、そんな笠置には、一つの黒歴史がある。笠置を引退に追い込んだ原因とも囁かれた“歌謡界の女王”美空ひばりとの確執である。
果たして笠置の人生に暗い影を落とすこの事件は劇中で描かれるのだろうか。
“ベビー笠置”として登場
ひばりが歌謡界の表舞台に登場したのは1948年、10歳の頃だ。『東京ブギウギ』が発売され、爆発的なヒットとなった年である。当時、母親が結成した楽団で歌っていた彼女に歌手の川田晴久がほれ込み、一座にスカウト。大人顔負けの歌唱力で歌う笠置のモノマネが評判を呼び“ベビー笠置”として大人気となった。
ひばりは“ブギを歌う天才少女”として名を馳せていく。そのさなかの1949年、日劇の1月公演『ラブ・パレード』が開催される際に、笠置サイドから、ひばりに笠置の新曲である『ヘイヘイ・ブギ』を歌うな、という通達がされる(『東京ブギウギ』は許可)。続けて翌年、ハワイ巡業に行く際にも「笠置シヅ子の歌を歌うな」と申し入れがあったという。