北朝鮮の朝鮮人民軍の若手兵士にとっての最高の栄誉は、最高指導者である金正恩・朝鮮労働党総書記の警護を任されるシークレットサービスの一員に選ばれることだという。その選任に当たる地方の党組織指導部副部主任が候補者の親から賄賂を受け取っていたことが分かり、労働改造所送りになっていたことが明らかになった。その両親も同様の処分を受けたという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮では金氏の警護に当たるシークレットサービスを「護衛」と呼んでおり、その候補者はほとんど軍内でも武道や射撃などに優れたエリートであることが多い。護衛は党の中核組織である党組織指導部に所属し、金氏の警護に当たるメンバーは護衛司令部に配属される。
その選考対象者は10代後半から20代前半の若手で、家庭環境、社会階級の基盤(忠誠心や犯罪歴)、学業成績、体格、健康、性格、素行などが総合的に審査される。選ばれるのは1000人に1人といわれるほど、狭き門だ。
そんな「護衛」を選ぶある地方党組織の副主任が、候補者の両親から中国人民元で5万6800元(約114万円)の賄賂をもらい、その息子を合格させていたことが発覚した。
この副主任は、同じく選考に当たった部下1人にいくばくかの金を渡して、残りは自分の懐に入れていた。しかし、お金をもらえなかった他の部下が別の上司に密告したこと不正が発覚した。
副主任は一時的に労働改造所送りになったが、今後行われる裁判の結果次第では公開による銃殺刑の可能性もあるという。
このような警護などの選任に関する贈収賄事件は後を絶たない。なぜならば、金氏の護衛になれば、軍のエリートとしても将来が約束されるのはもちろん、任務終了後は優先的に大学に入学したり、卒業後、希望の職場に配属され、幹部になることが保証されるからだ。
護衛になれば、将来は安泰だけに、両親や親族はあらゆるコネを使って子供を護衛にしようとする例は多く、護衛選任を担当する上級部門の審査も年々厳しくなっているという。