放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、岩井ジョニ男について綴る。
* * *
ライブなどは、やっているらしいがテレビでは時々しかみかけない男。私の番組のスタッフを捕まえ「ずっと聞いてるんですが、一度隅っこの方でいいのでスタジオ見学に行っていいですか」。素人のような頼み方。「高田さんにきいてみてOKだったらスタジオ入って喋ったらどうですか」「え~~ッ!?」。
不思議な男がいたもんだ。整髪料でビッシリ固めた七三分けに黒縁眼鏡。チョビヒゲにスリーピースの背広、大橋巨泉もびっくりの巾広ネクタイ。まさに昭和のサラリーマン。「若者文化を知らない中年男性」。時として「ママ チェック!」「オイルショック」と叫ぶ。イラスト描きとしては燃える素材だろう。「イワイガワ」というコンビを組む岩井ジョニ男である。
略歴的にはタモリの運転手からさんまにハマリ『お笑い向上委員会』で「モニター横芸人」として少し脚光を浴び、こんにちに至るという訳。
スタジオで初対面。ひたすらおどろき感動し「高田センセーって本当に実在してたんですねぇ。いつもラジオで笑ってるから」「見た目じゃ判らないけどいくつなの?」「ハイ、40から50を行ったり来たりで」「なんでジョニ男っていうの?」「元々ホストだったんで、ジョニーという源氏名がいいなと思ってたらその店“ヨシオ”とか“カズオ”とか普通の名前なんですよ。それでジョニーのつもりが“ジョニ男”に。ジョニーだったら2時間待ってたと伝えてもらえるのに」と余計なことを言う(“ジョニーへの伝言”である。もう判らない)。
ある日突然タモリの弟子になろうといきなり自宅をピンポーン。当然断られるが次の日も次の日も。49日間連続で通い続けるのでさすがのタモリも根負け。
「車の運転まかされたの?」「そうです。あの人、車の中じゃ地図と時刻表しか読んでませんからネ」「しくじりは相当あったろ?」「結構道も間違えまして。プライベートでゴルフへ送る際、道が判らなくなって遠まわりしてたらバレて。ビシッとひと言言われました。“仕事は遅刻してもいいが、プライベートは遅刻するな!”と珍しく激怒されました」。
タモリ宅へ仲人を頼みに行った時、何故かみんな酒もすすみ、婚約者も酔って、なんのはずみかタモリの鼻の穴へ指二本がズボッ。ボウリングの球のよう。酔っ払ったタモリがジョニ男と婚約者のまわりをフラメンコを踊りながらグルグルまわる(一体何の儀式だ)。ジョニ男がそっとタモリ夫人にきいた。「あれはどういう意味なんですか?」「OKということです」。不思議な4人だ。
※週刊ポスト2023年10月20日号