寝つきの悪さや不安を和らげるために処方された薬が、新たな不安の種となる場合がある。
「歳をとると早起きになる」と言われるが、これは感覚的な話ではなく、加齢により睡眠を支える生体機能リズムが変化し、早期覚醒や中途覚醒しやすくなるからだという。
製薬会社MSDの調査では、40~70代の約6割が寝つきの悪さや中途覚醒、早期覚醒などの「不眠」に悩まされていると答えている。
不眠の原因は様々だが、高齢者の場合、現役時代と生活リズムが変わったり、生活習慣病をはじめ基礎疾患が不眠につながると言われるが、なかでも共通する特徴がある。
多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹医師(内科)が言う。
「眠れないことへの不安や焦りが非常に強いなど、精神的な面が不眠症状に影響するとされています」
前述の調査でも、約半数が眠れない原因を「不安や興奮、緊張やストレス、考え事などで眠れない」と回答している。
夜中のトイレが危険
そうした「不安」に対して、医療機関を受診すると「睡眠薬」を処方されることがあるが、日本医師会と日本老年医学会は、75歳以上には薬の効きすぎや副作用リスクを懸念して「慎重な投与」が必要だと指摘している。
「慎重な投与」を要する薬のリストも公表されており、睡眠薬だけでなく、脳・神経に作用する抗うつ薬や抗精神病薬も同様に多くのタイプで名前が挙げられている。掲載の表に示した。
なぜ、75歳以上になるとより注意が必要なのか。秋津医院院長の秋津壽男医師(内科)が言う。
「高齢になると若い人と同じ量を服用しても、その日のうちに薬の成分が代謝しきれず、前日の薬が体内に残っている状態で次の薬を飲んでしまうことが多々あります。体内に薬が蓄積し、効きすぎるリスクがあるのです」