『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、50代から60代の現役世代の悩みに答える。「離れて暮らす80代を超えた老親の交友関係」に関する不安に、和田医師はどう答えるのか。
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詮索するより「相手と何となく知り合う」努力を
独り身になった親御さんと離れて暮らしている場合、普段、どんな付き合いをしているのかがわからずに心配になるという子供世代の声を聞くことがあります。しかし、だからといって、本人に話を聞いて「どんな人とどんな付き合いをしている?」などと詮索するのは筋違いでしょう。反対に、同じことを親御さんからされたら嫌な気分になりませんか?
遠くで心配するくらいなら、親御さんが親しく交際する相手と「何となく知り合っておく」のがいいでしょう。頻繁に親の元に顔を出しているのであれば、付き合いのある誰かが訪ねてきたときに挨拶するということです。
「いつもお世話になっています」と言ったときに、相手が「いや、誰々さんとお茶を飲むのが楽しくてね」などと返してくれるのであれば、日頃の心配から離れて相手と知り合うチャンスです。
「うちの親もだいぶ衰えてきちゃったので、もし何か悪いことがあったら、私の携帯にちょっとかけてもらえませんか?」という感じで、親御さんが親しく付き合う相手との間にうまく入っていくのが理想的でしょう。
しかし、親御さんが遠方の田舎で一人住まいをしている場合は、頻繁に顔を出すのは難しいでしょう。それでも何かあったときに助けてもらえるような、自分も顔見知りの近所の親しい人が相手なら安心で、そうではない相手の場合、「変な人と付き合っている」と勝手に決めつけるのはどうでしょうか。
私が「金持ちパラドックス」と呼ぶケースをご紹介しましょう。例えば、妻と死に別れた高齢の男性がいるとします。そうした場合に、常連として通う近所のスナックのママさんや小料理屋の女将と仲良くなって、本人が「俺、この人と再婚しようと思う」と言い出したら、子供はどう反応するでしょうか。
特に財産もない家のケースでは「よかったじゃん、お父さん、幸せになれて」と歓迎されるのに、少しでも財産がある家では、「そんなの財産目当てに決まっているじゃない」と反対されるのがオチです。親御さんの財産なのに、再婚されると子供である自分たちが相続する取り分が減ると思って反対するなんて、最低の態度だと私は思います。