冒頭に掲載した写真は、1982(昭和57)年の「小学生将棋名人戦」で優勝した小学6年生の羽生善治(前列右)。3位の森内俊之(羽生の隣)、後方に立つ谷川浩司、羽生の3人が「永世名人」となった──。
藤井聡太フィーバーに沸く将棋界。スターはいつも彗星のごとく誕生し、世代交代を成し遂げ自身の時代を宣言する。その輪廻の歴史を写真で記録した『将棋カメラマン』(弦巻勝著)が話題だ。半世紀にわたりレジェンド棋士たちの撮影を続けてきた写真家の弦巻勝氏が語る。
「写真とは“愛情”であるというのが僕の考えです。相手の良いところを撮る──その考えで50年間、棋士を撮り続けてきました」
棋士たちとともに泣き、笑い、そして飲み明かした「接近戦」半世紀の星霜はすべて同書に詰まっている。以下、弦巻氏が捉えた、素顔の名棋士たちを、写真とともに紹介しよう。
型破りなパフォーマンスでファンに人気があった米長邦雄。1985(昭和60)年、中原誠との十段戦を控え、鳥取砂丘で前代未聞の「ヌード」を披露し話題を呼んだ。
大山康晴とともに戦後の将棋界をリードした升田幸三。「新手一生」を座右の銘とし、数々の伝説を残した。東京駅で新幹線を待つ間の「チョイ飲み」時の1枚。
中学生でプロデビューし、史上最年少名人の記録(当時)を打ち立てた天才・谷川浩司。「光速の寄せ」と呼ばれた終盤術で将棋界に革命をもたらした。