10月1日から様々な制度や仕組みが変更されたが、「ふるさと納税」に関するいくつかの変更点もそのひとつだ。変更前に駆け込みで「ふるさと納税」利用の機運も高まったが、新しい仕組みのもと、改めて地元の産業振興に寄与する新しい返礼品が次々と登場している。ライターの小川裕夫氏が、1分当たり約3000人、年間で約13億人が利用する新宿駅に関わる「ふるさと納税」商品を用意した狙いをレポートする。
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2008年から始まったふるさと納税は、希望する自治体に”寄附”することにより住民税などの税額控除が受けられる制度だ。制度当初は仕組みが難解だったこともあって件数・金額ともに低調だった。しかし、歳月とともに周知され、同時に税額控除の仕組みもワンストップ化されて、利便性が向上。寄附を受けた自治体側も豪華な返礼品を用意してふるさと納税を集めることに躍起になった。
そうした自治体側の何がなんでもふるさと納税を集めるといった姿勢が、返礼品合戦としてヒートアップする。税金を納める場所を選ぶのではなく、豪華なものをお得に手に入れられる要素ばかり注目されたため、官製カタログギフトと批判されたこともあった。地方自治体を所管する総務省はふるさと納税に一定の制限を設けるなどの措置を講じたが、総務省の取った措置は抑止効果を発揮していない。
ふるさと納税額は2022年度に過去最高の9654億円を突破。これらの多くは、東京・大阪といった大都市に居住する住民から地方都市へ納税されている。そのため、東京・大阪の自治体は、ふるさと納税によって多額の税財源が流出していると危機感を強めた。このまま税の流出が続けば、住民サービスは維持できなくなる。
これまでにも、東京都杉並区が公式的にふるさと納税への反対を表明し、区民に対しても呼びかけるポスターを作成したことがある。杉並区のポスターは大きな話題となったが、それでも税の流出が止まる気配はない。税の流出に頭を悩ませるのは杉並区ばかりではなく、世田谷区や新宿区も杉並区に同調する姿勢を見せていた。
新宿区ならでは「ふるさと納税返礼品」
そうした中、新宿区は2023年10月からヒートアップする返礼品合戦への対抗手段を打ち出した。
「新宿区は、ふるさと納税の意義には賛意を示しています。ただ、豪華な返礼品によってふるさと納税を集めるような行為は本来のふるさと納税の意義とは異なると考え、返礼品を用意していませんでした。このほど、返礼品を用意することになったのは、あまりにも税の流出額が大きくなっているからです。区の試算では、ふるさと納税による2022年度の税流出額は約34億円で、許容できる額ではありません」と憤るのは、新宿区総務部総務課の担当者だ。