北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の記者といえばエリートとして知られるが、本来の仕事である取材や執筆をそっちのけにして、日々の生活費を稼ぐため、副業に精を出している記者が少なくないという。記者の特権である「無料交通パス」を知人に貸したり、企業の提灯記事を書くなどして、裏の報酬を得るのに忙しいという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
労働新聞の記者は党の機関に所属するエリートだ。両親もエリートで、3代にわたって党に忠誠を誓った家柄でないと労働新聞には入れないほどだという。
記者になってからも、昇進試験があり、入社2年後には一番下の「レベル5」への試験があり、その数年後には「レベル4」への試験がある。そして、最終的に10数年間で最高レベルの「レベル1」まで到達しなければならないという。これらをパスしなければ閑職に回されてしまうこともある。
しかし、社内の競争に勝っても待遇が良くなるわけではない。彼らの給料は1990年代半ばに北朝鮮経済がどん底に落ちて以来、低額のまま増えない状況だ。
このため、記者らは必然的に仕事よりも生活費を稼ぐために副業に精を出すことになる。交通パスの貸与や企業の提灯記事だが、そのなかでも人気が高いのが農業関係の取材だ。
共同農場を取材すると、管理委員会の幹部が良い記事を書いてもらうために、「心付け」としてコメや食材、あるいは食糧の引換券などをお土産に渡してくれることが多いからだ。また、海外との取引がある国有企業での取材では、ドル紙幣などを渡してくれることもあるという。
労働新聞の発行部数は発表されていないが、北朝鮮メディアは金氏が2015年に1日あたり60万部の製造と配布を命じたと報じている。その後、2018年には紙不足で20万部にまで激減したと中国メディアは伝えている。