【週刊ポスト連載・医心伝身】脳動脈瘤が破裂することで起こるくも膜下出血は約30%が死亡し、約40%は重度後遺症(寝たきりなど)になるという。この原因の一つで、くも膜下出血の止血治療後、2週間以内に発症する頻度が高いのが、脳血管攣縮による脳梗塞だ。2022年、25年ぶりに脳の血管が収縮することを予防する新薬が承認された。48時間以内に15日間連続投与すると脳血管攣縮を阻止でき、脳梗塞を防げる。
くも膜下出血は激しい頭痛や嘔吐などの症状の他、意識を失って起こることも多く、死亡率は約30%、多少の後遺症があっても社会復帰できるのが約30%、残りの約40%は重度後遺症を患う。
日本人の発症数は10万人あたり、22.5人と欧米の6~9人に比べると多く、好発年齢は50~60代だが、20~30代での発症もある。
くも膜下出血を起こした場合、治療は出血箇所を止血する緊急手術となる。早急に開頭して破裂した脳動脈瘤をクリップで挟むか、カテーテルで脳動脈瘤の内側にコイルを詰める血管内治療を行なう。
これら緊急止血手術で命を取り留めても、発症後4日~2週間の間に40~70%の頻度で脳血管攣縮(痙攣性の収縮)が起こる。その場合、20~50%が脳梗塞を発症し、それが寝たきりなどの重度後遺症に繋がってしまう。
日本赤十字社医療センター第一脳神経外科の木村俊運副部長に聞いた。
「脳血管攣縮のメカニズムの全ては解明されていませんが、出血した脳動脈瘤から再出血しないよう血管を収縮させ、止血する働きを行なうためなのではないかと考えられています。脳血管攣縮は徐々に進むことが多いのですが、急激に進行するケースもあります。術後経過も順調で、退院が見えてきた患者さんが突然、脳梗塞を発症し、その結果、言葉が出なくなったり、また半身麻痺になり、社会復帰が難しくなった事例が、しばしば見受けられます」
くも膜下出血での脳血管攣縮が起こったら血圧を上昇させ、狭くなった血管にバルーンやステントを入れて広げるカテーテル治療が行なわれる。加えて昨年、血管攣縮予防の新薬ピヴラッツが保険承認された。