ライフ

【新刊】伊坂幸太郎の人気「殺し屋シリーズ第4弾」『777 トリプルセブン』など4冊

殺し屋シリーズ第4弾。人も仕掛けも面白いハイテンションゲーム

殺し屋シリーズ第4弾。人も仕掛けも面白いハイテンションゲーム

 肌寒い日が増えてきた昨今。読書の秋にゆっくりと読みたい、おすすめの新刊を紹介する。

『777 トリプルセブン』/伊坂幸太郎/KADOKAWA/1870円

 今回も絶好調! 簡単な仕事で高級ホテルを訪れた天道虫(七尾)は、ツキのない男にふさわしく別の仕事で来ていた他の業者の動きに巻き込まれる。モウフとマクラ、ナラ、アスカなど今回も入り乱れる殺し屋達のネーミングに笑う。ホテル内レストランでグルメを楽しむ政治家がこの話のどんなピースになるかはお楽しみに。柚子胡椒入りのチーズケーキ、食べてみたい……。

孤独よりもつらいのは孤立。孤独を受け入れないと孤立する

孤独よりもつらいのは孤立。孤独を受け入れないと孤立する

『眠れないあなたに おだやかな心をつくる処方箋』/松浦弥太郎/小学館/1650円

『暮しの手帖』編集長就任当時、睡眠障害を経験した著者がストレスフルな現代人にそっと寄り添う。「人間関係には適度な距離感を」「読書を忘れない」、寝る前に「嬉しかったことを三つ思い出す」など。中でも刺激的なのは「お金のリテラシーの変化に気づく」。かつて目的だったお金は道具になり、今は増やすのも使うのも信用だと。付いていけてない自分がちょっと恥ずかしい。

「よもだ」とはユーモラスなへそ曲がりの意。「きぬぎぬに蚤の飛び出す蒲団哉」(子規)

「よもだ」とはユーモラスなへそ曲がりの意。「きぬぎぬに蚤の飛び出す蒲団哉」(子規)

『よもだ俳人 子規の艶』/夏井いつき、奥田瑛二/朝日新書/935円

 三夜のオトナ対談。第一夜は子規の句にエロスを発見した喜びを奥田氏が語り(艶俳句と命名)、第二夜は具体的な句を通して子規の女性経験に分け入り、第三夜では各自の俳句観を交えて子規の宇宙を概観する。最短詩形の俳句にはその人が出てしまうが、面白いのは解釈にもその人が出てしまうこと。ロマンとダンディズムの奥田氏、明朗スッキリの夏井氏、この顔合わせ妙なり。

『伊勢物語』がモチーフ。千年を旅する女達の愛と性

『伊勢物語』がモチーフ。千年を旅する女達の愛と性

『三度目の恋』川上弘美/中公文庫/946円

 幼い頃から恋したナーちゃん(生矢)と結婚した梨子。彼は他に女性がいることを隠さず、それでも梨子は一途にナーちゃんが好き。ある日小学校の用務員だった高丘さん(澁澤龍彦『高丘親王航海記』より)と再会した梨子は、江戸の遊女や平安の女房となって違う時代の自分の生と性と愛を生きる。この夢部分と現実部分の往還が本書を読む醍醐味。ラストの広がりも胸にしみる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2023年11月2日号

関連記事

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン