Mリーグが開幕した9月18日のパブリックビューイング会場には、開場の4時間も前からファンが長い列を作っていた。驚くのは若いカップルや女性ひとりの来場者が目立つことだ。
創立から6シーズン目を迎えたMリーグは「ノーギャンブル宣言」を掲げ、麻雀のイメージを一変させた。プロスポーツのように、インターネットテレビ「アベマTV」でプロの麻雀を楽しむ“見る雀”が生まれ、イベントにファンが大挙する時代が到来したのだ。
「今では4割ぐらいが女性のファン。雀荘に行ったことはなくても、アプリでルールを覚えている人も多い。禁煙やノーレートの雀荘が増え、クリーンなイメージが定着している」(サクラナイツ・岡田紗佳)
一度の放送で100万視聴を記録することも珍しくない。プロ歴25年以上のパイレーツ・小林剛はその変化に戸惑いもあるという。
「これまで麻雀を打つだけだった自分が街中で声をかけられることも増えました。麻雀という競技の広がりを感じ、その分、プロとして背負う責任も大きい」
今季からビースト・ジャパネクストが参戦し、9チーム制に。日本の5つのプロ団体から選ばれたMリーガーの総数は36人になった。約半年をかけて各チームが96試合を戦い、上位6チームがセミファイナル(各20試合)に進出。生き残った4チームが16試合のファイナルで覇権を争う。
昨シーズンは、サイバーエージェント社長にして、Mリーグのチェアマンである藤田晋が監督を務める「渋谷アベマズ」が悲願の初優勝。アベマズのエースで藤田とともに今の麻雀ブームの火付け役となった多井隆晴は、史上初の連覇に向けてこう意気込む。
「チャンピオンだからと油断して、負けてしまうのは不本意。2回優勝してから天狗になろうと思います。史上最強チームになる。それがこの1年の目標です」
今季から2年連続でセミファイナルに進出できなかったチームは、選手を入れ替えなければならない規定に。シーズン終盤はJリーグの降格争いに似たドラマが生まれ、またそれが長丁場の戦いを飽きさせない演出にもなっている。ほかのスポーツと同様に「熱すぎる実況」で盛り上げるのが実況の日吉辰哉。彼自身もプロ雀士である。
「Mリーグの関連イベントに限らず、麻雀界全体でイベントが増えた。麻雀プロが麻雀の仕事だけで食べていけるようになったうえに、業界に新たな雇用が生まれている」
この麻雀ブームを一過性のもので終わらせるわけにはいかない──。その想いを全員が共有している。