90年の歴史がある日本プロ野球においても、1965年から1973年にかけて達成された巨人の9年連続日本一は「不滅の記録」として位置づけられる。ONという球史に残るスーパースターとしてチームを引っ張った王貞治氏(83)が、当時を振り返りながら、今の巨人について語った。【全4回の第4回。第1回から読む】
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今はクライマックスシリーズがあり、それを勝ち抜いていかないと日本シリーズに出場することができない。つまりAクラスに入りさえすれば、どのチームにも日本シリーズへの出場チャンスがある。
そのためシーズン終盤でも戦う前から諦めたり、捨てゲームというものがなくなった。日本一になるチャンスが残っていることで、選手の目の色が変わる。優勝したチームにはプレッシャーもあり、ファンとしても熱のこもった試合を最後の最後まで見ることができる。これはよかったんじゃないですか。
クライマックスシリーズもそうですが、今は我々の時代と比べて野球が複雑になっている。投手も分業制だし、代走専門で頑張っている選手もいます。
それだけにV9の頃と単純に比較はできないと思います。今のほうが日本シリーズまでに関門(クライマックスシリーズ)があり、リーグ優勝すれば2分の1の確率で日本一になれた時代とは違います。
川上(哲治)さんが今の時代を戦えばV9はできていなかったかもしれません。それぐらい今の時代に日本一になるのは大変なこと。それを理解した上で日本シリーズを見ていただければ、選手にとって特別な戦いだということがわかってもらえるのではないでしょうか。
4位に終わり、原(辰徳)監督が勇退したジャイアンツは、マスコミでは「戦力がありながら」と言われるが、結論を言えば戦力がなかったんですよ。戦力が期待通りの働きをしていないから負けたのであって、逆に阪神は戦力が期待以上に働いたということでしょう。オリックスにも同じことが言えます。
そんなペナントレースとは別物なのが日本シリーズ。そこは我々の時代から変わらない熱い戦いがある。
大谷翔平はじめ、日本人選手たちがWBCやメジャーで活躍して世界中から注目されていますが、日本のプロ野球が輝かないとこういった凄い選手も出てこない。
そのためにも、まずは日本シリーズという最高の舞台を目指してもらいたい。
聞き手/鵜飼克郎(ジャーナリスト)
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号