二刀流は野球界の話ばかりではない。Mリーガーのなかにも、俳優の萩原聖人やモデルの岡田紗佳など、麻雀プロ以外の顔を持つ者は多い。今シーズンも、新たに3人の雀士が異業種から挑戦している。
新規参入を果たしたビーストジャパネクストの鈴木大介(49)は棋士として最高段位の九段まで昇格し、日本将棋連盟の理事として多忙な日々を送ってきた。今年4月に理事退任を表明し、5月には日本プロ麻雀連盟に入会。そして、6月のMリーグドラフトで指名された。すべて麻雀界参戦を見据えてのことだった──と思われがちだが実は違う。
「いち棋士に戻って、これからは一日10時間ぐらい将棋の勉強をするつもりだったんです。ところが、麻雀プロの方からお誘いをいただいた。妻に相談すると、意外にも『いい年なんだから、最後のチャンスと思ってやってみたら』と応援してくれたんですよね」
棋士と雀士。どちらかに偏ることなく、両道を進む。9月18日の開幕日の第2戦に出場すると(結果は3着)、翌朝10時から将棋の王位戦予選の対局へ(勝利)。
「さすがに眠かったですね(笑)。将棋も麻雀も、負けた日は悔しくてなかなか寝付けない。麻雀プロになったばかりですから、自宅での勉強は麻雀に割く時間が多いので、朝起きて1時間と、寝る前の1時間は詰め将棋を解くようにしています。アスリートにとっての筋トレみたいなものです」
プロ棋士を目指していた奨励会時代に、大介は“雀鬼”こと桜井章一が率いる「雀鬼会」に入り、桜井を師と仰いだ。だが、両親に説得され、桜井と話し合った上で「破門」に。
「それでも会長は僕のことを応援してくれた。自分の攻める麻雀のスタイルは、雀鬼会で鍛えられたものでイズムは受け継いでいる。棋士としての局地的な読みの鋭さと、雀鬼会のハイブリッドが自分の麻雀です」
つい先日、桜井と30年ぶり再会を果たすと「子どもみたいに思っている」と言われた。49歳での新たな挑戦を前にこれほど励みになる言葉もないだろう。