これまで、朝起きられない子供たちに向けられてきた「怠けている」「気合が足りない」といった精神論。しかし、その症状には理由があった。最新の研究が示す治療法を、自身も睡眠に悩みを抱えるジャーナリスト・横田増生氏が徹底取材した。
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激しい頭痛に悩まされていたKさん(14才)が、地元・茨城県の小児科で「起立性調節障害」と診断されたのは、小学5年生のときだった。
「そんな病名があることを初めて知りました。
小学3年生の頃から頻繁に頭痛を感じ、朝起きるのが苦手だったのですが、これは病気だったんだと驚きましたね」(Kさん)
頭痛は夕方になるとひどくなり、食事をとることも、入浴することもできなかった。病院で処方された頭痛薬を服用して、ごまかしながら乗り切ってきたという。
しかし、中学校に進学した昨年の秋、新型コロナウイルスに感染すると頭痛が悪化。めまいも起こるようになり、ひどく気分が落ち込んだ。
病院からは血圧を上げる薬が追加された。しかし、薬をのんでも血圧計の数値が上がることはなかった。
今年4月に中学2年生になると、学校に行けない日が増え始めた。6月はほとんど学校に通えなかった。ベッドに入って寝付くまでに時間がかかるようになったからだ。
22時にはベッドに入るが、24時前後まで眠れない日が続く。眠りにつくのが遅くなると、翌朝の頭痛がひどくなり、目が覚めるのは通学時間をとうに過ぎた9時頃。そこから起き上がるまで、さらに3時間近くもかかる。Kさんは学校に通いたい一心で、母親と病院を何箇所もめぐった。
転機となったのは、今年の夏休み、県立病院で睡眠専門医の診断を受けたこと。そこで、新たに「睡眠相後退症候群」と診断され、向精神薬〈アリピプラゾール〉1mgと、眠気を誘う〈メラトニン〉2mgを処方された。
効果は1か月で表れ始めた。
ベッドに入ると、30分ほどで眠たくなる。22時半に眠れた夜は、翌朝の頭痛もほとんどなく、6時半には起き上がり、登校もできた。
「新しい薬をのむ前の体力と気力を100とすると、いまは130ぐらいまで上がってきました。この調子だと、休まず学校に通えそうです」(前出・Kさん)