Mリーグで2年目から公式実況を務めているのが日本プロ麻雀連盟の日吉辰哉(47)。常に高いテンションで言葉を紡ぎ、劇的な展開ほど声を震えさせ、時には敗者に寄り添いながら卓上のドラマを伝えている。
「めったにあがれない役だとしても、必ずしも名局と呼ばれるわけではない。ずっと視聴者の記憶に残る名場面は、シーズン終盤の負けられない状況など、必ず背景が伴うものだと思う」
日吉の至極の一局は2020年シーズン最終盤で起きた。最下位に沈んでいたフェニックスがセミファイナル進出に向けて負けられない状況下で送り出されたのは近藤誠一(現・監督)だった。
「苦悶の表情で牌をツモり、逆転には必須の条件だった裏ドラをめくるときにはあのベテラン雀士の手が震えていた。奇跡を超えた奇跡をお届けできるのは実況者冥利に尽きると思います」
日吉が思わず叫んだ「伝説の名局」を紹介しよう。
【伝説1】負ければチーム解体危機のなか引いた「魂の倍満」
最終局を迎え、近藤は4着。トップとは約2万点差。逆転トップに立つには倍満(16000点)をツモる必要があった。条件を整えて聴牌し、リーチをかけるや一発ツモ。日吉は《信じらんないだろ、こんなの!》と絶叫した。