数少なくなった喫煙所はどこも混雑している。港区指定喫煙場所に並ぶ人たち(時事通信フォト)

数少なくなった喫煙所はどこも混雑している。港区指定喫煙場所に並ぶ人たち(時事通信フォト)

 島田さんの懸念は、すでに別の場所で「問題」として顕在化していた。

 東京・千代田区で商店を営む斉藤章子さん(仮名・60代)は、店の横の路地(私有地)が、いつの間にか「喫煙所」になってしまっていたと嘆く。

「周囲には大企業の本社ビルや高層ビルがいくつもありますが、多くのビル内、会社内が禁煙になっているそうで、喫煙される方が外に出てくるんです。区内には路上喫煙所もありませんから、ここみたいな、人の目につきにくい場所に隠れてこっそり吸う方が後を絶たない」(斉藤さん)

 千代田区は全国に先駆けて2002年に区内全域(皇居を除く)で「路上喫煙禁止」へと踏み切った、禁煙ムーブメントのパイオニア的な自治体としても知られる。喫煙者の多くは定められた場所で喫煙をするようになったが、やはり我慢ができない不届き者が、斉藤さんの敷地内に無断で侵入し、我が物顔でタバコを吸っていくのだ。いや、タバコを吸われるだけならまだ「マシ」と言わざるを得ないほど、状況はひどい。

「ここが喫煙所だと勘違いしている人がたくさんいて、中には”善意”で灰皿を設置していく人もいます。たばこだけならまだ良くて、ここでお酒を飲んでゴミをそのままにしたり、吐いたり騒いだり、おしっこまでするんです。何度注意しても、次から次へと事情を知らない人がやってくるから、言うだけ無駄という状態ですよ」(斉藤さん)

 注意の張り紙も貼る度に何者かにはがされるなどしていたが、ついに防犯カメラを設置したことで、喫煙者は激減した。

「それでも、まだこっそり吸う人はいる。カメラに気がついても顔を隠してまで吸っていることもあります。民間人に迷惑がかかっているのだから、自治体にはもっとしっかりして欲しいと切に思います」(斉藤さん)

 路上喫煙禁止の導入から20年が経っているが、地域住民を悩ます一部喫煙者の不品行は今も続いている。

マナー悪化で灰皿撤去したら「ヤミ喫煙所」に

 似たような喫煙トラブルは各所で頻発している。東京・中野区内の駅近くにあるたばこ店店主・上野雄吉さん(仮名・70代)が嘆息する。

「元々は店先に喫煙所があって、そこで客に吸わせていたんだよ。ただ、中野区も路上喫煙禁止になって、会社でも吸えないという人が増えて以降は、喫煙所が人でごった返すようになってね。昼時なんか行列までできて、近所の店からクレームまで来るようになった。近くの駅が全面禁煙になった時も、喫煙客が一気に増えたこともあったから同じだよね 」(上野さん)

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